はじめに
ある人曰く、
「偉い人が集まるパーティに行くと、あちこちで
『私は誰々を知っている』という話と
『私は何々を持っている』という話しか聞かなかった。」
人の生き方はそれぞれなので、それがいけないことだとは思わないけど、私自身はこの言葉をずっと心に留めています。
ということで、これから書くことは私の妄想です。
パワーゲームとは
ここで言う「パワーゲーム」とは、「組織内の上下関係を組織外の個人的な関係にも拡大し、組織そのものに外部から影響を与える行為」を指します。
すぐに思いつくのは任侠の業界(今でいうところの暴力団組織)です。
説明しているページがあったのでリンクしておきます。
組織の中に序列があるのは一般的です。でもある親分と別の組織の親分との間に序列ができると、組織やその組織の構成員の間にも序列ができることになります。
例えば組織同士の意見の対立があったとして、どちらに発言力があるのかは序列で決まります。
業界が閉じている中では、自浄作用も機能してこの秩序(?)は維持されているようです。ところが業界の外(いわゆるカタギの人)が個人的な人脈でその序列をバイパスしたり、序列でない利害関係を生じさせることで従属する構造にほころびが出ると、北野武監督の映画のような世界が広がることになります。
パワーゲームでないもの
パワーゲームのように見えますが、そうでないものもあります。例えば企業における親会社-子会社の関係です。
親会社から送り込まれた人物が子会社の役員として、親会社の意向に沿った企業統治を行うことは、今回のパワーゲームには該当しません。
なぜならば親会社と子会社の支配関係は出資に伴う議決権により決定されるからです。これは資本主義のルールであり法的な裏付け(会社法とか)のもとに成立しているものです。決して個人的な人脈で動いているわけではありません。
「大学の先輩が部長だから、この会社には逆らえない」とか言っている社長がいるのならば、その会社はパワーゲームに支配されていますのでヤバイです。
公的な機関(裁判所)の場合
さて、私が現在所属しているのは公的な機関ですので、公的な機関における状況も考えてみましょう。
組織間で序列があるものとすれば、代表的なのは裁判所でしょう。
裁判所は大きく分けて、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所があり、一つの事件について最大3回の審理を行うことができる三審制を採用しています。とはいうものの、最高裁は上告棄却も多いので、実際は3回の審理が行われることは少ないのですが。
裁判所における序列は法律によって定められています。厳密に言えば下級裁判所間に序列があるとは規定されていませんが、裁判権の順番から序列があると推定することにします。
この場合も法に規定された範囲において組織間の役割が存在するので、パワーゲームが生じる余地はありません。地方裁判所の判決が不服だからといって、最高裁判事に個人的に文句を言うわけにはいかないのです。
公的な機関(行政機関)の場合
では、国と地方公共団体の関係はどうなのでしょうか? これは地方自治法に規定があります。
国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係(地方自治法 第二編 第十一章)
(関与の意義)
第二百四十五条 本章において「普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与」とは、普通地方公共団体の事務の処理に関し、国の行政機関(内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四条第三項 に規定する事務をつかさどる機関たる内閣府、宮内庁、同法第四十九条第一項 若しくは第二項 に規定する機関、国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項 に規定する機関、法律の規定に基づき内閣の所轄の下に置かれる機関又はこれらに置かれる機関をいう。以下本章において同じ。)又は都道府県の機関が行う次に掲げる行為(普通地方公共団体がその固有の資格において当該行為の名あて人となるものに限り、国又は都道府県の普通地方公共団体に対する支出金の交付及び返還に係るものを除く。)をいう。
一 普通地方公共団体に対する次に掲げる行為
イ 助言又は勧告
ロ 資料の提出の要求
ハ 是正の要求(普通地方公共団体の事務の処理が法令の規定に違反しているとき又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害しているときに当該普通地方公共団体に対して行われる当該違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことの求めであつて、当該求めを受けた普通地方公共団体がその違反の是正又は改善のため必要な措置を講じなければならないものをいう。)
ニ 同意
ホ 許可、認可又は承認
ヘ 指示
ト 代執行(普通地方公共団体の事務の処理が法令の規定に違反しているとき又は当該普通地方公共団体がその事務の処理を怠つているときに、その是正のための措置を当該普通地方公共団体に代わつて行うことをいう。)
二 普通地方公共団体との協議
三 前二号に掲げる行為のほか、一定の行政目的を実現するため普通地方公共団体に対して具体的かつ個別的に関わる行為(相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的としてされる裁定その他の行為(その双方を名あて人とするものに限る。)及び審査請求、異議申立てその他の不服申立てに対する裁決、決定その他の行為を除く。)
(関与の法定主義)
第二百四十五条の二 普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとされることはない。
なお、これは自治事務に関するものであり、法定受託事務はまた別の基準があります。ただ言えることは、自治事務を執行する立場として地方公共団体はその立場を明確にし、行動に責任を負うことが求められるのです。
また、地方公共団体に対し、国や都道府県が法律によらない事由で関与することがあってはならないと考えます。よって国と地方公共団体の関係においてもパワーゲームは存在しないはずです。
もしかして勘違いしているのかも
ところが国、都道府県、市町村の関係においてパワーゲームと疑われるような行為が生じていたり、当事者の中でもそれを受容する、場合によってはそれを歓迎するような発言をされる方を時折見かけるという妄想にかられます。(変な日本語)
「うちの市である事業をやりたいのだけど、県が全然支援してくれないのです。おたくの省庁の○○さんの後輩の△△さんは県に出向してますよね? △△さんに言って、何とかうちの市の事業を支援するように県を動かしてくれませんかね」
というのが、国、都道府県、市町村のなかであるかもしれないパワーゲームの一例です。(こういう事例があるという意味ではありませんので念のため)
ドラマや小説の世界では、こういう「意外な人脈による劇的な展開」というのは痛快ですが、勘違いの果てに現実にこのようなことが行われてるとするならば、かなり危機的な状況です。
妄想なので詳しく書きませんが、市町村が行う事務について、国や都道府県がパワーゲームにより関与するようなことがあるのならば、その行為は慎むべきですし、市町村も自らが動きやすくなりたいがために、パワーゲームを求めてはならないのです。
パワーゲームによる関与が成立すると、結果的に関与した側の実績が積み重なることになり、一層パワーゲームに持ち込むようになります。それ以外の(地道な対話による)解決方法はアホらしくてやってられません。
またパワーゲームにより個人的な関与で解決できるとなると、その個人に権限が集中することにつながり、様々な不正行為や癒着が生まれやすくもなります。
また地方公共団体は、これまでの積み重ねで獲得することができた自治事務を自ら手放してしまうことにつながるのです。
まとめ
昨今の地方公務員は、地方自治法を本当に理解したうえで業務に従事しているのでしょうか。いや、これ自体も妄想ですので気になさらぬよう。