ICT人材募集からみる東京都の狙いについて

はじめに

まず、本件は私の勝手な憶測に基づいた記事であり、内容に何ら信憑性が無いことをお断りしておきたい。その上で東京都が今後目指している方向性について想像をめぐらし、外野の立場から好き勝手に書き残しておこうと思う。

2019109日の東京新聞に「都、民間からICT人材募集『宮坂副知事と仕事やりがいと魅力を』」という記事が掲載された。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201910/CK2019100902000142.html

これによると、

募集するのは戦略政策情報推進本部のデジタルシフト推進担当課長。十人程度を採用し、都が進めるデジタル技術活用の企画立案や調整、都庁内の情報環境改革などを担う。

とある。

ここでは詳しく書かないが、総務省の事業でも自治体にICT人材を派遣する構想があり、自治体におけるICT人材の不足はこのところ顕著になっているように見える。(余談だが、私のところにもいくつかの自治体からオファーが来ていて、私の身体の許す限りお応えするようにしている。)

実はあまり知られていないが、東京都はすでに外部のITベンダー出身者を部長級・課長級職員として多く迎え入れている。それなのに、なぜさらに人材を募集するのかが判らなかったのだ。

副知事のツイート

そんな中で、気になったのは最近副知事に就任した宮坂氏のツイートである。

この時間は台風19号が伊豆半島に上陸する前であるが、(この時点で)今後起こり得るWebアクセスのトラフィック増について、対策のヒントを示している。これ自体は非常に的確な指摘だと思う。

ただ、気になるのは台風上陸前の段階であっても、ここに示された対策を実行に移すことができた自治体は皆無だっただろうということである。その理由は現場の自治体職員であれば判るはずだ。当の東京都ですら、Webサイトへのトラフィックを十分に捌くことができていなかったことから、これらの対策が限定的にしか実施できなかったものと推察される。

東京都が目指す方向のヒント

ここでふと気づいたのだが、もしかすると副知事はこれらの対策のいくつかを自治体側で「当然できるもの」と思っていたのではなかろうか? 言い換えると、東京都が目指す方向のヒントがここに隠されているような気がする。

これまで行政の情報システムは効率的な業務遂行の「手段」として扱われ、コアコンピタンスとしての認識は薄かったが、東京都は情報システムを含むICT全般を行政運営の中核に置こうとしているのではないかと想像する。

ここで読み違いをしてしまうといけないので、私なりの解釈を付記しておきたい。

なぜ募集人材のポストが課長級職員なのか? 上記の仮説が正しいとするならば、必要なのは実際に運用に携わるエンジニアなのではなかろうか?

おそらく課長級職員にしたのは、一般職員との待遇(主に給与)とのバランスを考慮したものだろう。それは募集人数からも読み取れる。募集人数を「10人程度」と幅を持たせているのは、採用人数の増減があっても組織に影響を与えない、すなわちライン上に配置しないスタッフ職であると考えられる。

つまり、ここで課長級の待遇を有するスタッフ職がチームを組んで、全庁横断的に業務に従事するイメージが浮かんでくる。

Yahoo!のようなWeb上のサービスを提供する(運用する)企業にとっては当たり前の体制だが、自治体においても内製回帰する、あるいは少なくとも職員が中心となって情報システムの運用を行う体制に近づけることで、政策実行のスピードを早める目的があるのだろうと想像する。

(もちろんこの体制も課題が残る。運用においてこの人材がマネジメントする対象は都の職員ではなく、外部の委託事業者である可能性があり、事業者との契約形態や関係についても整理しておかなければならないのだ。「50人以上のスタッフをまとめて事業に成功した経験」を求めているのは、このあたりが理由だと思われる。)

他の自治体はどうすればよいのか?

さて、東京都はそちらに舵を切るとして、他の自治体はどうすればよいのだろうか? 危険なのは東京都が課長級職員を公募したから、自分たちも「管理職」を募集するべきと考えることだろう。上述のとおり、必要なのは実際に頭と同時に手も動かせる人材であり、既存のラインにとらわれない仕事を行う人材である。

組織の一部に組み込むような配置を考えているのならば、かなりの確率で飼い殺しになるので、留意した上で必要な人材のあり方について検討するべきだろう。もっとも、東京都と同じ待遇、規模で人材を確保すること自体が難しいので、自治体の実情にあった方策を考えなければならない。

私の仮説のとおり、運用を自治体側に引き寄せていく方針ならば、その担い手になる人材層の厚さは必ず必要となる。それらを全て外部人材で充てることは普通の自治体では不可能なので「安定的な委託契約」か「職員育成」のいずれか(あるいは両方)を選択することになるだろう。

仮に外部人材を充てるのならば、「職員育成」させる目的、あるいは「安定的な委託契約」を調達制度との整合性を維持したままハンドリングさせる目的で登用するべきで、決して運営の主体になってはならない。そもそも外部人材も永続的に雇用されるわけではなく、いなくなった後のインパクトが非常に大きいので、依存するのは危険だと思う。

当方の勝手な意見(妄想)で恐縮だが、何かの参考になれば幸いである。

 

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