地域情報化:地域における情報分野で自治体が担うべき役割は何か(3)

Administrative Lawyer CIO Contribution

前回の記事「地域情報化:地域における情報分野で自治体が担うべき役割は何か(2)」の続きです。

#他のテーマの記事もあるのですが、書き込むタイミングがずれてしまいましたので、先にこの話題を。

さて、われらが自治市の状況ですが(なんだか、この設定を少し忘れてしまってた気がします)、悲しいほどに申請手続きに関するオンラインでの情報提供がなされていません。(この文脈での「オンラインの情報提供」というのは、電子申請に関連することが前提なので、Webによるものだとご理解ください)ちなみに、都道府県は事業者に対する許認可手続きを多く扱っており、区市町村は住民に密着した手続きが多いという特徴があります。

もちろん役所は許認可手続きだけを扱っているわけではないので、優先順位を考えると仕方がないところもあります。また緊縮財政の折、「住民サービスの向上」の前に「事務の省力化・コスト削減」に関心があるようなので、どちらかというと情報提供の意図は「提供することにより事務の省力化が期待できる」方に偏っているように思います。

なお、ここで問題にしているのは、オンライン(Webベース)での話であり、紙媒体(冊子)での情報提供は十分に行われているケースはあります。

その場合でも、事務の省力化に寄与する、例えば申請件数が非常に多い手続きで、申請者に対して個別にその手続きの説明を行うことが困難な場合、「申請の手引き」のような冊子を作成し申請者に配布する、ということが行われています。オンラインでの情報提供は、この手引きをそのまま(PDFで)転載することでよし、としている自治体も多いです。(東京都庁はそんな感じですよね)

逆に滅多に行われない手続きについては、その都度役所の担当に方法を確認してもらうことで十分、という考え方もできるでしょう。

蛇足ですが、行政機関は伝統的に縦割り行政でして、自治体や省庁間での縦割りもよく見られるのですが、意外に深刻なのが、自治体内の部局ごとの縦割りなのです。情報提供の程度も部局でバラバラですし、対象としている情報提供先(つまり申請者)の層が共通であっても、部局の違いにより連携が一切取れていない、なんてケースはざらです。そしてそれに疑問を感じていないのです。

批判をおそれずに書くと、自治体のWebページはそのクオリティに天地の差があります。自治市は残念ながら下から数えた方が早いぐらいのクオリティです。

悲しいですが、CIO補佐官の私が変化を促しても、ホントにバカバカしい組織の論理で前に進まないことにイライラすることもあります。(蛇足な上に愚痴でした)

ここまでが自治市を含む自治体のオンラインによる情報提供の現状でした。

で、これらを踏まえて、このままでいいの? というのが私の問題提起です。
一応整理すると、許認可申請に関するオンラインでの情報提供は、次のような状況でした。

  1. 手続き件数が多いものは、紙媒体から派生した情報を掲載することにとどまっている。
  2. 手続き件数が少ないものは、事務の省力化に寄与しないため、積極的に行っていない。
  3. 部局間での連携がないため、同じ申請者に対して関連した情報提供を行う体制ではない。

1.については、提供する情報の質の向上、維持が課題だと思います。紙媒体で最適化された情報がそのままオンラインで活きるのかは、きちんと評価した方がよいでしょう。

私個人の経験ですが、結局公開されているPDFファイルをダウンロードして丸ごと印刷してから申請手続きに臨む、というケースが多かったように思います。私はそれで不自由を感じなかったのですが、申請者のITリテラシーにより受ける印象は違うような気がします。

2.については、仮に電子申請が受け付けられる状態であるのにも関わらず、情報提供がなされていないというのは問題です。

そりゃ、利用率も上がりませんよね。オンラインで完結しないわけですから、一度でも窓口に行くのなら、申請も窓口に行くのが自然でしょう。そのため、取りうる方法は2つです。「電子申請の対象から外す」か、「オンラインでの情報提供を行う」です。

個人的には事務の省力化に寄与するか否か、という理由づけは言い訳だと思っています。滅多に発生しない手続きであっても、根拠法令は存在し、役所の担当はその業務を知っているはず(恐ろしくてこれ以上は言えない)です。さらに人事異動に伴い後任にその業務を引き継ぐはずで、その業務に関する形式知化された何かがあるはずなのです。乱暴なことを書きますが、情報提供をするのなら、当初はその「何か」でさえもオンラインでの提供の対象とするべきなのではないかと考えます。

窓口に個別に手続きについて問い合わせた時でも、職員は手ぶらで説明することはないでしょう? クオリティはともかく、「何か」があるはずです。例えそれが根拠法令であっても、上級官庁からの通達であっても、業務を遂行するためには手ぶらでは自治体職員は動けないのですから。クオリティの向上はその次の段階だと思います。

3.は現在の行政組織ではすぐに解決しづらい問題です。
ユーザーオリエンテッド(ユーザー指向)での情報提供に踏み切るまでの組織の改革は困難でしょう。現在取り組みが進んでいるマイナンバーは、これを組織の改革の前に情報システムの導入という形で進めようとしているものです。

ちなみにこの件について私の考えは2つあります。一つは、この問題を民間に委ねてしまうこと。(1.と2.も民間に委ねれば?と言われればそれまでですが)

もう一つは、知識工学的なアプローチで解決できないか、ということです。実は私の博士論文はこのアプローチに関することがテーマだったんですよ。
(論文の内容については、これまた機会を改めて)

 

photo by: Zach Dischner

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