積算と見積精査:行政機関の情報システム調達における積算業務は妥協の産物か(1)

CIO Contribution

考えを整理するために、架空の行政機関に登場してもらいましょう。公益法人や省庁なども考えてみたのですが、モデルケースとしてふさわしいのは地方公共団体ですので、とりあえず地方にある中核市を想定してみました。

名前は「自治市」とでもしておきましょう。架空の行政機関、自治市のお話です。

今回の話は、少し背景説明が必要かもしれません。
おそらくCIO補佐官になられる方は民間企業出身の方が多いでしょうから、民間の感覚のままだと理解できないことが多いのです。また行政機関は民間とは異なり、情報システム開発に関する基本的なセオリーが通用しないことがありますので、なるべく詳細に記すことにします。

多くの地方公共団体は自らの事業執行で歳入を確保することができません。当然ですよね。公営企業を除けば、プロフィット部門は存在しないわけですから。

よく「三割自治」と言われますが、財政基盤の弱い自治市の場合、地方税を始めとする自主財源が約30%であり、残りの70%は依存財源と言って、地方交付税交付金、臨時財政対策債、国庫支出金などの国から賄われる財源と地方債で占められています。

過疎地域などを抱える地方公共団体の場合、人口増加が期待できない上に、高齢化による産業の空洞化が進み、自主財源の確保が厳しい状況です。必然的に予算規模は縮小傾向にあり、少ない歳入で行政運営を行うべく歳出を抑える工夫が必要となります。

年間の予算規模が5000億円程度(勝手に決めました)の自治市における、情報システムや情報化に関する予算を約12億円としておきましょう。比較対象になるかわかりませんが、人件費は約1300億円(これも勝手に決めました)。これらの数字は公営企業を含む自治市全体のものです。

こう考えると自治市の情報化に関する予算は他の地方公共団体と比較してずいぶん低めかもしれません。きっと職員が優秀なのでしょうね。ただ、まだまだ手ぬるいのと、コスト削減とともに情報システムとその運用プロセスの質の向上を目指さなければならないので、課題は多く残されています。

また、自治市には情報技術の専門職員が存在しません。汎用機などを稼働させている行政機関は、コンピュータのお守り役として専門職員を採用していることもありますが、幸いにも自治市はダウンサイジングの取り組みが終わっています。

そして、情報システムの開発、運用、保守のほぼすべてを委託契約した外部の業者(ベンダー)に文字どおり「委ねて」おり、内部の職員が直接関与することはありません。これも近年増えているパターンですね。


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