前回の記事「情報システム調達:モレなくダブりなくシステムの委託契約を行う工夫を(3)」の続きです。
前回は運用委託、保守委託の契約分離の具体例について解説しました。
さてさて、こうやって運用委託と保守委託の契約を分離することで、直接的にはこんな結果となりました。
まず、運用委託は一般競争入札が原則となり、委託金額の適正化が行われました。短期的に委託金額が上昇したケースもありますが、概ね作業内容に応じた金額となりつつあります。
保守委託は、ハードウェア保守がほとんど機器メーカーの標準的な保守メニューでカバーできているため、委託内容と金額に疑義が生じる余地がなくなりました。そもそもハードウェア購入時に3年ないしは5年の保守パックを購入しているため、目に見える事務量の増加もありません。
ソフトウェア保守は、プログラム著作権の帰属の有無にかかわらず、当初開発したベンダーが受託する率が高いのはやむを得ないのかと考えています。
オープンソースプロダクトですと多少事情が異なるのかもしれませんが、LL言語で構築したWebシステムや、VB、Accessで構築した小規模のクライアントサーバシステムは、案外開発ベンダー以外の業者が受注するケースも増えてきています。
興味深いのは、基幹系システムの運用委託と保守委託の費用の関係です。
前述のとおり、これまでは運用委託と保守委託を包括契約しており、さらに一部の基幹系システムではプログラム著作権が完全に自治市に移転していないものもあります。
その結果、そういうシステムの運用保守委託契約は、他のベンダーが参入できないとの理由で単独随意契約となっています。
しかし運用委託と保守委託の費用の内訳をみると、その比率が、
運用:保守=9:1
のような関係だったのです。
つまり、単独随意契約は委託費用の1割を占める保守委託によるものであり、9割を占める運用委託は競争性が働く委託業務であるにも関わらず、長い間に渡り、無風状態だったのでした。
これにメスを入れたことにより、運用、保守の委託業者が異なるケースが発生し、お互い緊張感を持って業務に臨んでいただいています。