日経ITproに日経BPの井出さんの記事が掲載されています。
電子自治体はどこへ向かうべきか(ITpro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130819/498822/
「7月下旬、「電子自治体の取組みを加速するための検討会」の第1回会合が、総務省で開催された。5月のマイナンバー法(番号法)の成立と、6月の新IT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」の閣議決定を受け、電子自治体の推進を加速させる新しい指針を策定するために、有識者から意見を集めるのが目的である。」
ちなみにこの検討会は、下記URLを参照のこと。
電子自治体の取組みを加速するための検討会
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/denshijiti-kasoku/index.html
この種の検討会は、省庁の施策を行うための布石と見るべきなのですが、今回は平成18年度に策定した「新電子自治体推進指針」の改訂が目的です。そのため、目指す方向が大幅に変わることはありません。ITproの記事にもあるとおり、マイナンバー法と「世界最先端IT国家創造宣言」がインプットされたことの修正がなされるだけでしょう。
なにせ「新電子自治体推進指針」で掲げた事柄で、達成できていないことが多く残されているのです。これらを無かったことにはできません。冷静な評価が必要なのです。
もちろん「解釈」次第では、「新電子自治体推進指針」は一定の成果を収めたと言えなくもありません。しかし、実感として世の中はさほど変わっていません。国民から見たベネフィットは得られていないのです。仮に部分的にベネフィットが得られているとしても、それは単に投資した分のリターンであり、付加価値の創造ではありませんでした。
新しい指針がこれまでの取り組みの延長線上にあるのならば、期待できる成果も限定的なものになるでしょう。なぜならば、新たにインプットされたマイナンバー法と「世界最先端IT国家創造宣言」が電子自治体の取り組みを加速させるための条件として機能するためには、さらに多大な投資(金銭的、人的)が必要となるからです。
残念ながら、今の日本がそれだけの投資ができるとは思えません。
少なくとも、自治体がこれらの取り組みに対して投資の優先度を高める意思決定をするには勇気がいります。他にもやるべきことが自治体には多く課せられているのです。
(私は地方の自治体のCIO補佐官を経験した後に、都心の自治体のCIO補佐官に就任していますが、さほど違いはないと思っています)
「今回の検討会による指針を要素として踏まえつつ、個々の自治体での個別最適の取り組みを前提としたこれまでの電子自治体指針とは一線を画し、新しい電子自治体の姿を探る場があってもよいのではないだろうか。全国規模での自治体クラウドのあり方や推進管理体制、クラウドを介した官民連携によるオープンデータ化やBCP強化などを検討する場である。地方自治法や自治財政法との整合性、地域IT産業の育成・支援などにも配慮しながら、得られるメリットや乗り越えなければならない課題を整理することは、電子自治体の将来にとって無駄にはならないはずである。」
そうなのです。現役のCIO補佐官として言うならば、どの自治体の情報政策も未解決の課題が山積みです。私自身は、電子自治体に関する取り組みで区民にベネフィットを示せるまでには、あと二つほど山を越えなければならないとの見通しを立てています。その間、ムダな投資は区民が許してくれません。拙速な取り組みは区民の信頼を失うだけなのです。
新たな指針が「地に足をつけた」ものになることを期待しております。
「親の心子知らず」ならぬ「自治体の心国知らず」にならないように。