この記事は私が教員をしている大学の卒業研究科目についての説明です。
研究プロジェクトは通期開講の選択科目であり、「研究プロジェクトⅠ」「研究プロジェクトⅠⅠ」の二科目で構成されています。この科目は両方の科目を順番に履修する必要があります。ここでは「研究プロジェクトⅠ」について解説します。
「研究プロジェクトⅠ」の科目概要について
研究プロジェクトⅠの科目概要は下記のとおりとなっています。
企業経営、公共政策、マスメディア、社会生活などに関するテーマを学生と教員で設定し、研究方針を決定する。その後、テーマに関する先行研究を調査し、研究の成果となる卒業制作(デジタルコンテンツ)の計画書を作成する。(実際の卒業制作は研究プロジェクトⅠⅠで行う)
研究プロジェクトは、自分で課題を設定し、調査し、考えを深めて、自分の意見をまとめ、発表するなど、主体的に研究を進める方向けの科目です。選択科目ですので、特に取り組みたいテーマが無いのであれば、無理に受講する必要はありません。
ただし、大学の醍醐味は講義受講ではなく卒業研究にある、と考える方もいらっしゃいます。卒業研究をまとめることで、充実した大学生活の総括としたい方は、チャレンジしてみてください。
研究プロジェクトの指導をお引き受けする前に
研究プロジェクトは指導する教員も同じ研究テーマに向き合うスタンスですので、教員との協力関係が欠かせません。そこで次のような方は、指導をお引き受けできないこともあります。いずれの場合も研究プロジェクト受講に関する事前相談とみなさんの講義受講履歴を拝見して判断させていただきます。
日本語あるいは英語で文章を書くことができない方
私の研究室の研究プロジェクトを受講する場合、事前相談を行うのですが、その際にどのような研究テーマを考えているのか、研究テーマ案を書面で用意してもらいます。
この書面を拝見するだけで、卒業研究の指導に耐えられる文章作成能力があるか否かはわかります。無理な場合には、その旨お答えします。
念のためにお知らせしておきますが、卒業研究はその成果物がいかなるものであっても、文章を書く能力(あるいは文章作成に付随する構成力)が必要なのです。
研究テーマが面白くない方
面白いか否かは、判断が難しいところですが、少なくとも私にとって興味をそそられるテーマでなければ、あまり良い成果を挙げることができないでしょう。
でも大丈夫、この大学には他にも指導教員がいますので、センスの合う教員を探してください。
研究に関する調査方法に無理がある(実現性が乏しい)方
調査方法に関する考え方については、別の記事にまとめておきます。
課題が意欲的なものであり、革新的なものであったとしても、それを明らかにする調査方法がなければ、ただの妄想にすぎません。案外、このことに気づかず、後で困っている学生を(いろいろな大学で)多く見てきました。
成績が不良の方
この大学では、学力よりも、自己管理能力の多寡が成績という形で表れているような印象を受けます。つまり成績が良い受講生は、自己管理能力が高いのです。その意味で、成績が不良な方が研究プロジェクトを受講することはお勧めしません。
一方、単に要領だけがよい受講生も、結果としての成績は高いようですが、そもそも、そのような受講生は卒業研究という効率の悪い科目は受講しないでしょう。
川口研究室が取り組んでいるテーマ
一方、川口研究室が取り組んでいるテーマで卒業研究を行うという選択肢もあります。この場合、卒業研究に取り組もうとする学生は、上述した研究テーマや調査方法について心配する必要がありません。(もちろん、文章作成能力、成績に関する条件は満たしていただくことが前提です)
川口研究室が取り組んでいる、あるいは関心を持っているテーマは次のとおり。
ちなみに、私は大学のコース、プログラムの枠にはまるようなテーマには関心がありません。
プロジェクトマネジメントを支援するソフトウェア「docmaker.net」の改良
すでに動いているソフトウェアとVisual C#で開発したソースコードがあるので、それを読みながらソフトウェアの機能追加を目指します。ソースコードはオープンソースとしてGitHubで公開しています。当然のことながら、開発言語としてVisual C#を使います。(学生向けの Visual Studio は無料です)
スマートフォン用の教育ゲームアプリの改良
ゲーム用フレームワーク Enchant.js を用いて開発しているスマートフォン用の教育ゲームを改良します。すでに動いているソフトウェアとソースコードがあるので、それを読みながら機能追加を目指します。開発言語は JavaScript です。
バレーボールの試合データを用いたデータ分析
バレーボールのルールや戦術を学び、試合データを分析することにより、新たな知見を導き出す手法を研究します。
卒業制作について
研究プロジェクトでは、研究の成果をデジタルコンテンツという形で発表します。
デジタルコンテンツとして想定しているのは次の4つです。この中のどれか(あるいはこれらの組み合わせ)になります。
- 電子書籍
- Webサイト
- 動画コンテンツ
- ソフトウェア
電子書籍は、主にAmazonのデジタルパブリッシングを用いて、公開することを想定しています。基本的に有料で配布する可能性を追究しましょう。(万が一収益が出たら、それをどうするのかも決めておきましょう)
Webサイトは文字どおり、成果物をWebページにて公開します。管理は私の方で行いますので、おそらく私の研究室のWebサイトの配下に配置されることとなります。
動画コンテンツは、いわゆる短い番組を制作し、公開します。公開先はYouTubeを想定しています。収録も編集もご自身で行います。最近はフリーソフトででも動画編集が可能ですし、収録はスマートフォンやタブレット端末でもよいのです。
ソフトウェアは文字どおり、開発、改良したソフトウェアそのものです。基本的にオープンソースとして公開します。
研究プロジェクトの成果物は研究のテーマにもよりますが、電子書籍がよいかもしれません。これまで卒業研究の成果物は論文、レポートと相場が決まっていましたが、これを電子的に作成し、公開することが今後の主流となります。
それでは、頑張っていきましょう。