地域情報化:地域における情報分野で自治体が担うべき役割は何か(5)

Administrative Lawyer CIO Contribution Strategy

前回の記事「地域情報化:地域における情報分野で自治体が担うべき役割は何か(4)」の続きです。

前回は行政手続きに関する情報提供の重要性について解説しました。高知県のRDFデータの公開などは地味かもしれませんが、オープンデータという言葉を目にする前の取り組みとしては先見性があったのではないかと思います。

さて、このテーマの締めくくりはオープンデータについてです。
(今回の記事は書き下ろしです)

オープンデータに関する議論というのは、なかなかかみ合いません。その一つの理由として「オープンデータ」という言葉の定義の曖昧さが挙げられます。

オープンデータ = データの開示 ではないのです。

いや、私自身もこの考えを肯定しているわけではないのですが、オープンデータを単なるデータの開示と解釈する人(例えば私とか)がいる中で、オープンデータにご執心な方々がオープンデータの意義を話しても伝わらないのです。

実は以前もこれと似た状況がありました。オープンソースにまつわる議論です。

オープンソース = ソースコードの開示 と解釈すると、単に開発したソフトウェアのソースコードを開示することがオープンソースであると考えてしまいがちです。

もちろんこの考え方は間違っていないのかもしれませんが、実際にはオープンソースという活動の中には、ソースコードの開示だけでなく、開示したソースコード自体の管理やソースコードを活用した二次著作物の取扱い、ソースコードを取り巻く人たちのコミュニティ形成、最終的には人材の安定維持を目的とした企業の雇用など多岐にわたる活動が含まれています。

オープンソースのライセンスにまつわる話題などは、上記の「ソースコード自体の管理」や「ソースコードを活用した二次著作物の取扱い」に関する事前の取り決めに関連する事柄でしょう。

さて、オープンデータの話題に戻りましょう。
まず、オープンデータを推進したいのならば「オープンデータがデータの開示を示すものではない」ことを適切に伝える必要があります。

現在発売中のWIRED(2013年 Vol.9)は「オープンガバメント」を特集しています。

国内の自治体で「オープンデータ推進」と言っているところの多くは、サンフランシスコに本部を持つ ”Code for America” というNPOの影響を受けています。というか、基本的にはCfAの真似をしようとしています。つまりオープンデータではなく、オープンガバメントなのですね。

http://www.codeforamerica.org/

CfAの取り組みは大変ユニークですし、成功事例として参考にすべきことが多いのですが、国内の自治体の取り組みと根本的に異なる事柄があります。
それは、民間主導(NPO主導)で行われている取り組みであるということです。

すでに組織化され、実績を積んでいるCfAを批判できる立場ではありませんが、CfAに参加する人々のモチベーションは「自分の能力で行政を変革させる」というところにあります。否定的な言い方をすれば、やってて手応えがなかったり、つまらなかったりすれば、もともと能力の高いメンバーたちですから、もっと魅力的な活動の場を求めて、いつでも辞めてしまうことができます。

つまりこの取り組みの成否のポイントは、行政がいかに彼らを楽しませて、主体的に活動してもらえるか、その環境づくりにあると言えるでしょう。行政は彼らの自由な提案を鷹揚に受け止め、試行錯誤する場を提供する覚悟がなければ、この取り組みは不発に終わってしまうのです。

そういう意味では、この活動は有志が集う社会活動の一種であると言えます。実際のところ、国内の自治体でそれだけの覚悟があるところがどのくらいあるのでしょう?

ここからが私の考えです。

オープンデータの実態がオープンガバメントにあるというのならば、オープンガバメントに向けた意思表示をする手段として、オープンデータの取り組みを支持します。ただしこの場合のオープンデータとは文字どおり「行政が保有しているデータの開示」を指し、行政主導で何かに取り組むということではありません。「行政機関はデータは開示する。でも口は出さない」という姿勢を貫くべきです。

口を出さないのであれば、行政機関ができることはそれほど多くありません。

開示可能なデータを二次利用可能な形式で開示する

  • 「二次利用可能な形式」も解釈が分かれるポイントですが、データ取得のAPIを通してXML形式で受け取れる仕組みが提供されるとよいでしょう。
  • その場合、必ず「データフォーマットを整備しなければデータを開示することができない」という議論に陥るのですが、その心配は無用です。データフォーマットにバージョンをつけておき、一定期間は特定のバージョンのデータフォーマットをサポートするようにすればよいのです。
  • データフォーマットはシステムに依存することが多いですから、システムのライフサイクルを考えると5年間ぐらいは同じバージョンのデータフォーマットが使われるでしょう。それで充分です。住民サイドも永続的なデータの利用を想定していません。

行政機関も開示されたデータをもとにシステムを開発する

  • つまり行政機関のシステムは開示されたデータを活用した一つの事例にすぎないということになります。
  • 一般的に行政機関が提供するシステムは使い勝手がイマイチですので、住民側でさらに使いやすいシステムを開発し、サービス提供(有償、無償問わず)してくれれば、こんなに素晴らしいことはありません。
  • 住民側でシステムの整備をしてくれることが十分期待できるのであれば、最終的には行政機関はデータの開示だけ行い、システム構築すら必要なくなるかもしれません。

行政機関が自前でなんでも整備する時代はそろそろ終わりにしたいものです。
また行政機関が保有するデータ(ローデータ)だけでなく、行政機関が保有する形式知も併せて二次利用可能な形態で開示することができれば、行政機関の業務すらもある部分に限って住民側に開放することができるのです。

これが本当のオープンガバメントではないでしょうか?

 


« »