アイディアノート:経営戦略論 第1回 第4章

Contribution Strategy University

さて、この回の講義もこの章で最後だ。この章では主に経営戦略とマーケティングの関係について話そう。

第4章 経営戦略とマーケティング

その前にこんな質問をもらった。

Q: 第1章で経営戦略という言葉に明確な定義がないことを知りました。でも、私の知っている経営戦略は目標を立てて、予算を決めて、スケジュールを決めてと言った、事業計画に関するもので、競争という話とは違うのですが。

A: 経営戦略には明確な定義がないことは理解したようだね。実はある研究者が「経営戦略の視点は10種類ある」と言っているんだけど、ここではさらにまとめて3種類を紹介しよう。

  1. 競争を通じて相手との関係や位置づけを関心事とした視点
  2. 計画をもとに、いかに目標に到達するのかという手順に関心を持つ視点
  3. 組織や経営者がどうあるべきなのか、能力や行動規範を関心事とした視点

1.については、もういいよね。すでにいろいろと話した。補足すると競争環境の中で、いかに自分の立ち位置を決めるかがポイントになる。

2.は行政機関など、すでにやるべきことの大枠が決まっている組織で用いられることが多い。この場合、戦略と計画はほぼ同じ意味で用いられている。少し違うとすれば、計画は必ず実行するもの。戦略は世の中の環境の変化により必ずしもその通りに実行できるものではないものを指しているようだ。その場合、戦略に基いて個別の計画を立てることが一般的だね。

また、戦略(計画)を実行するために、組織構造を用いることが特徴だ。何か新しい取り組みをするならば、そのための部署を作る。必要なくなれば部署は無くなる。その結果、行政機関は毎年のように組織構造が変更されている。知らなかったでしょ?

3.は「良い結果を出す企業は良い資源(人・モノ・カネ・情報)を持っている」という考えに基づくものだ。つまりいかによい資源を確保するべきかを考えている。人材ならば外部から雇用してもいいし、内部で育成してもいい。モノだってそうだ。買ってもいいし、自ら開発しても、誰かに作らせてもいいのだ。(カネに関しては、この領域を専門的に扱う分野としてコーポレート・ファイナンスというものがある。勉強すること)

ちなみにこの3種類はどれも正しい。どの視点も「目的を達成するための手段やその道筋」を導き出すために必要なものだ。

Q: 戦略にもいろいろありますよね。私が聞いたことのある言葉で「販売戦略」「営業戦略」というのがあります。経営戦略と何が違うのですか?

A: いい質問だ。やはり定義がない言葉だけど、私は次のように考えている。

まず、経営戦略とは企業(あるいは事業部門)を単位にして考えるものだ。ちなみに事業部門というのは、大きな会社の中で半導体や携帯電話、原子力発電所、掃除機など多様な商品を扱っている場合、個別の商品分野ごとに組織を分けたほうがよく、その組織のことを事業部門と呼ぶのだ。

つまり、半導体と原子力発電所の経営戦略は異なるということだ。これは納得してもらえると思う。

そして私は、企業(この場合は単一の事業部門しかない場合)の経営戦略の下位戦略として「販売戦略」や「営業戦略」、「生産戦略」などがあると考えている。

ちょっと図を示して説明してみよう。次の2つの図は「経営戦略論」を学ぶ中で登場してくる、ファイブフォース、バリューチェーンと呼ばれるものだ。

(ファイブフォースの図)

ファイブフォースは企業を取り巻く環境を示したものだ。自社は真ん中の四角の中にいると思ってくれ。そして、赤く点線で囲った領域、ここでは自社とライバル企業と買い手(顧客)を構成する部分だが、ここの領域における戦略を「販売戦略」や「営業戦略」と呼ぶのだ。

(バリューチェーンの図)

こちらはバリューチェーン。自社内の活動の関係を示したものだ。例えば、赤く点線で囲った領域は同じく「販売戦略」や「営業戦略」に該当するものだし、一方、青く点線で囲った領域は製品の「生産戦略」に該当する。

その他いろいろな切り口で、個別の戦略を立てることは可能だ。

Q: さっきのバリューチェーンの図の中で「マーケティング」ってありましたよね? マーケティングと経営戦略はどう違うのですか?

A: バリューチェーンを見ると判るように、マーケティングは自社内の活動の一つとして整理される。厳密には違うのかもしれないけれども「営業戦略」「販売戦略」の一種と考えていいんじゃないかな。

では、マーケティングの話をして、この回を終えることにしよう。

マーケティングとは何かと問われると、その答えはこうだ。

「売れるための仕組みづくり」

このあたりも明確な定義がない世界なので諸説あるけれども、自社と顧客との関係を通じて、商品をどう売っていくのか、どうすれば売れるようになるのかを考えるのがマーケティングだ。

そのため、マーケティングで大切なことは3つあると考えられている。

  1. 顧客が何を求めているのかを知ること
  2. 顧客が求めているものをどのように用意するのかを考えること
  3. 自社で用意したものの存在や価値をどのように顧客に伝えるのかということ

この3つはどれも重要だ。

1.は「マーケティングリサーチ」と呼ばれる。客観的な事実に基いて、思いつきでない施策をするために必要な活動だ。

2.はマーケティングそのものというよりも、経営戦略における他の個別戦略や活動と関係が深い。顧客は求めているものを自社で作り出すのか、別のところから買ってくるのかなど、工夫のしどころが沢山ある。

3.は「マーケティングコミュニケーション」と呼ばれる。1.の結果をもとに、2.で用意したものの存在や価値をどのように伝えるのか、という視点で活動する。

伝える際にも工夫が必要だ。マーケティングコミュニケーションは二つの要素で構成されている。「メッセージ」と「メディア」だ。

  • メッセージ:顧客に伝えるべき内容。「安い」でもいいし「カッコいい」でも「便利」いい。どんなメッセージが顧客の心にヒットするのかを考えることは重要だ。
  • メディア:メッセージを伝達するための手段。テレビコマーシャルなのか雑誌広告か、インターネット広告かなどなど。メディアには特性があるので(「大勢に届くけど、多くのメッセージを載せきれない」など)メッセージとの組み合わせも工夫しなければならない。

そしてここ最近では、マーケティングに関する状況が変化しつつあることを指摘しておきたい。大量のデータ(ビッグデータ)を効率よく処理することが可能になり、従来では禁じ手とされていた「あえてマーケティングリサーチを行わない」というような新たな手段が出現しつつある。

このような新たなマーケティングの潮流は「ネットマーケティング」という分野が詳しい。「経営戦略論」と併せて学習されたい。

 

photo by: szeke

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