アイディアノート:経営戦略論 第1回 第3章

Contribution Strategy University

第3章 経営戦略は誰のためのものか

ここまで学んだことをもう一度思い返してみよう。なぜ経営に戦略が必要なんだっけ?

  • 行き当たりばったりではなく、少しでもうまくいく確率を高めるため。
  • 業界平均以上の利益を長期的に得られるような仕組みを作っていくため。

そうそう。そのために戦略を立案するのだったね。

じゃあ、何か質問ある?

Q: 戦略は誰が立案し、誰が行うのでしょうか?

なるほど。では、第3章は少し視点を内部に向けてみよう。

一般的に企業(事業活動を営む主体)の中には、大きく分けて従業員と経営者という異なる立場の人が所属している。「労使関係」という言葉を聞いたことはないかい? 「労働者・従業員」と「使用者・経営者」との関係という意味だ。それぞれ互いに協力し、あるいは対立しながら事業活動を営んでいる。

例えば、株式会社をイメージすれば「経営者」とは取締役と呼ばれる人たちであり、経営の責任を負っている。ここ重要。繰り返す。経営者は経営の責任を負っている。

一方「従業員」とは企業と雇用契約を締結し、企業の業務に従事している人たちである。一般的に社員というと、この従業員のことを指すことが多い。法律的には社員という言葉は従業員を指すものじゃないけど(詳しく知りたかったら商法や会社法を勉強しよう)。

少し補足すると、実際は従業員の中から従業員の業務を統率し、管理する立場を有する人がいる。「管理職」と呼ばれる人たちがこれに該当する。管理能力を評価されて管理職になる人もいるが、犬みたく経営者にしっぽを振って、その見返りに経営者の権限を背景にした劣化コピーみたいな管理を行うような管理職もいるのが、現在の日本企業の悲しいところだ。

まぁ、グチを言っても始まらない。では、それらの中で誰が経営戦略を立てるべきなんだろうか?

これは諸説あるが、基本的には経営の責任を負っている経営者の役割だ。企業が目指すべき、進むべき方針を立てることは、企業の経営に責任を負っている者しかできない。

一方、従業員はどのように向き合うべきなのだろうか。

経営者は戦略を立てる。そして管理職を経由して従業員がその戦略に基づく活動を実行に移す。つまり、どんなに経営者が戦略を立てても、従業員が実行できない荒唐無稽のものであっては意味がない。また、有効な戦略であっても、従業員がその戦略の意図や目的を理解できなければ、企業全体として充分な成果を発揮することができない。

Q: 何か事例を示してください

A: 例えば「売り上げアップのために、これまでの倍の顧客を集める」と経営者が指示したとしよう。しかし、これは戦略というには雑すぎる。

どのようにして倍の客を連れてくるのか具体的な方法は、従業員ごとにまちまちだ。また、顧客を集めたとして、それらの顧客が実際に商品を購入してくれるかはわからない。赤ちゃん用の紙おむつを売る企業が、顧客として高校生や大学生を集めても、売り上げがアップするとはちょっと考えにくい。

まぁ、無能な経営者はそういう時に「どうやるかは自分で考えろ」とか言うのだけど、これは単に経営者が経営の責任を放棄しているだけで、戦略と言うはほど遠いことは、キミもわかるよね。このような例では、従業員は戦略を理解できないだけでなく、実行すらできない。もちろん経営者の考えも伝わらない。

一方、戦略として、

「顧客を2倍に増やすことで収益も2倍にしたい。なぜ今期2倍にするのか? 2倍が妥当な理由はXXXであり、2倍にすることで会社の業績がXXXXのように改善する。具体的に2倍が可能な理由はXXXXであり、XXXのような手段を用いれば可能である。」

と示すことができれば、従業員も企業全体の中の自分の立ち位置ややるべきことを理解でき、具体的にどのように動くことで目標達成できるかが分かり、自覚を持って働くことができる。

そういう意味では、従業員は経営者の示した戦略の意図や目的を理解するように努めなければならない。経営者が優秀ならば、従業員はそれに応えるべきだろう。

つまり、経営戦略は「経営者が学べばよく、従業員は学ぶ必要はない」ということはない。従業員であっても、経営戦略が何であるかを理解し、企業の中の自分を意識して行動しなければ企業の目的を達成することはできない。だから、経営者になるつもりがない人でも経営戦略を学ぶべきなのだ。

Q: 経営戦略を学ぶ意義は少し理解できた気がします。ところで今勤めている会社の経営者が本当に○○なんです。経営戦略を学んでほしいのは、実はうちの経営者だったりして。

A: すでに経営戦略を受講した受講生の中から、同じようなことを聞くことはある。

私見だが厳しいことをいうと、無能な経営者の下でも従業員は経営者の無能さに付き合って、忠実に動くべきだろう。仮にそれが明らかに間違った方針であってもだ。

経営者の無能さに付き合って忠実に動くことで、結果的に企業の業績は低迷するが、その業績低迷の責任を負うのは経営者の役目だ。言い換えると、無能な経営者を従業員の働きで助ける必要はない。併せて言うと、経営者の能力を判断し、経営を監視するのは従業員ではなく株主の役目だ。現実にはこの経営監視が機能していない企業が多いのだが。(このあたりを詳しく学びたければ、コーポーレートガバナンスについて調べることをおすすめする。)

それでも経営者の無能さに我慢できないのなら、その企業に居続ける必要はない。働く場所は他にもある。少なくとも自分の信念や現実と天秤に掛けて、企業を離れる選択をする人は多い。本当に好きな仕事ならば、自らが経営者となって経営戦略を立て、その仕事をするのもひとつの選択だろう。

今までいろいろな企業を見てきたが、優秀な従業員から去っていくような企業は、ほぼ間違いなく経営者の能力に問題がある。

Q: でも実際にはいろいろあって辞めれないんです。

A: これも私見だし、厳しいことを言うが、現状認識が甘すぎるのでは? 自分の置かれた環境を自分なりに分析し、その後の行動の指針を決める。実はこれは企業の経営戦略と考え方は全く変わらないのだ。

そういう意味では、経営戦略は企業だけでなく、自分自身の生き方においても応用可能だ。経営戦略を学ぶことで、自分自身を見つめなおすきっかけを掴んでほしい。

 

ということで、この章はこれでおしまい。

 


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