地域情報化:低迷続きの電子申請分野に潜む本当の課題は何か(3)

Administrative Lawyer CIO Contribution

前回の記事「地域情報化:低迷続きの電子申請分野に潜む本当の課題は何か(2)」の続きです。

前回は「これまでの電子政府・電子自治体に関する取り組みが、具体的な施策の検討よりも、(結果として)将来に備えた情報通信基盤の整備に重きを置くことになった」ということを解説しました。

今後はいよいよ、先送りにしてきた問題をどのように解決していくかを主たるテーマにすることになるのです。当面の目玉施策はマイナンバーでしょうね。

一方、私の考えは政府のものと少し違っています。そこで、まず電子申請に関する取り組みについて、政府と私の考えの違いについて整理します。

政府が想定している電子申請のイメージは「完全オンライン申請型」と言えるでしょう。韓国の事例に近いようです。

以前、韓国のKOTRAという団体(日本で言えばJETROみたいな団体です)の紹介で、韓国の電子政府、電子自治体の視察に行ってきました。

韓国の電子政府、電子自治体は世界的にも成功していると言われていて、日本の一部の自治体(佐賀県など)や民主党政権時代の総務大臣も韓国の事例に大きく関心を寄せていました。

ただ日本と異なる3つの背景が、韓国の電子政府、電子自治体を成功に導いていると私は考えています。

1)韓国は国民ID制度があり、さらに男女とも18歳になると役所で指紋を登録しなければなりません。つまり国民を認証する制度的な基盤がすでに成立しています。

これは隣国の脅威に備えるものとして、社会的に受け入れられているのだろうと推察できます。男性は兵役義務もありますし。

日本と韓国の国民を対象に行われた「社会基盤としての国民IDに関する国民意識調査」(NPO法人東アジア国際ビジネス支援センター)によると、

▼必要性は理解しているが情報保護に不安–個人IDに関する意識調査より(ITpro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090602/331207/

個人情報がインターネットでやり取りされることについて・・・という設問で、日本では「いくら暗号化などしても信用できない」がトップだったのに対し、韓国では「いつ誰が閲覧したかを通知されれば許せる」がトップだそうで。

2)市道・市群区(日本の都道府県、市町村に相当)のシステムは、全国統一システム。中央で開発して各自治体に配布しています。

「中央で」というのは「国が」という意味ではなく、各自治体の出資により設立された公益法人(KLID)がその役目を担っています。職員も各自治体から派遣されているそう。

日本でもLASDEC(財団法人地方自治情報センター)という団体があり、KLIDはLASDECをモデルに設立されたそうです。結局、組織は同じように存在するものの、トップダウンで動きやすいお国柄かどうかで、その後の展開は大きく変わるという良い事例だと思います。

3)各省庁や自治体におけるバックデータの連携が整備されており、いわゆる手続のワンストップ化や電子申請時の添付書類の省略などが実現されています。

データの連携は民間にまで広がっており、例えば病院で医療費を決済したら、自動的に年末の税額控除に反映する仕組みとなっています。

マイナンバーで掲げられている未来像に重なります。すばらしいと言えばすばらしいですが、日本が韓国のモデルをそのまま真似していくのはどうかと思うのです。

(マイナンバーの利用の有無に関わらず)日本がすぐに上記のようにはならないだろうというのが、私の率直な感想ですし、仮にそうなったら、なんとなく暮らしにくいなぁとも思います(これはあくまでも主観)。

韓国の事例にご執心な方々は、上記のようになるようにしていくことが日本の電子行政の発展に必要だと考えていらっしゃるようですが、私はいいかげんな人間なので、今の日本とも違う、韓国とも違う、第三の道があるのではないかと、日々夢想しながら、まずは自分の与えられた仕事をこなしていく毎日です。

私の考えるアプローチは、前提が異なります。

  1. 住基カードと公的個人証明書は圧倒的なメリットが無ければ普及しない。強制的に配布することで、そこから新たな需要が喚起される可能性があることは否定しないが、一方で想定外のレベルでの軽率な扱われ方をする可能性が十分にある。
  2. 紙による添付書類が廃止されることは当面考えられない。マイナンバー導入に伴う省庁、自治体間のバックデータ連携により、住民票の写しや登記事項証明書が省略されることはありえるが、民間から発生する書面(民間事業者による契約書、証明書、決算書など)を電磁的記録で受け取るスキームが育つまでには少し時間がかかる。
  3. 電子申請=オンライン申請ではない。申請情報の伝達経路をオンラインに限定することで、普及しづらくなっているのではないか。
  4. これまでの少額決済のベストプラクティスは定額小為替であることを再評価し、同じ考えに基づいて少額決済方法を検討すべき。

ということで、私は電子申請普及をソフトランディングで実現することを提案しています。

具体的な方法は次回に。

 


« »