積算と見積精査:行政機関の情報システム調達における積算業務は妥協の産物か(3)

前回の記事「積算と見積精査:行政機関の情報システム調達における積算業務は妥協の産物か(2)」の続きです。
架空の行政機関、自治市のお話です。
私は自治市の情報システムを担当する原課職員に対して説明会を開き、積算の考え方についていくつかの方針を示しました。というところまでが前回のお話。
実はこの時に少しだけ話を誇張しました。原課職員が情報システムを担当する主体であるという意識を持ってもらうために、職員がなるべく納得できる理由を考えました。
私が考えた納得する理由というのは、積算手法に関する根拠付け(権威付け)です。
このように言いました。
---ここから
情報システム開発の世界では、積算には大きく分けて3つの手法があります。

  1. 見積精査法
  2. 工数積上げ法
  3. ファンクションポイント法

見積精査法とは、ベンダーから提示された見積の作業内容、工数を精査していく手法で、自治市の場合にはこれが最もポピュラーです。しかしながら、見積精査法は内容の客観性を担保するために、複数のベンダーからの見積が必要です。
私が自治市に赴任してきて、見積精査法であるにも関わらず、複数ベンダーからの見積を取っていないケースがあり、これは手続上の重大な瑕疵と判断されます。場合によっては、行政監査において指摘される事項に発展しますので、十分に注意してください。(と少し驚かす。でも本当に行政監査で指摘される可能性はある。)
次に、工数積上げ法ですが、みなさんが計画時に作成したWBS(Work Breakdown Structure)から作業工数を積上げて、費用を導き出す手法です。この手法を使うためには、みなさんが作業工程全体を把握した上で、WBSを作成していなければなりません。
最後に、ファンクションポイント法ですが、システム設計書の内容を基に、画面数、帳票数、機能数とそれぞれに必要な工数の重みを勘案して費用を導き出す手法です。この手法を使うためには、システム設計書を作成していなければなりません。

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