学生のみなさまへ:卒業研究における情報収集について

Contribution University

以前、卒業研究について質問を受けたことがあります。その際に考えたこと、他の学生にもお伝えした方がよい事柄をまとめましたので、ここに掲示しておきます。

なお、世の中には様々な学術分野があり、それぞれの流儀は異なります。ここで示したものは、主に社会科学分野に限定したものであることに留意してください。(自然科学分野はこれとは全く異なる考えだと思います)

卒業研究に限らず、事実に基づいた判断をするためには客観的な情報が必要となりますね。客観的な情報をいかに集めるかについて考えるべきでしょう。

今まで卒業研究に取り組んだことのない方の中には(ほとんどの方が該当する?)、案外、このあたりをいい加減に考えている方もいらっしゃるようです。むしろ、「疑問を解明するために、どのような情報を用いることができたか」ということ自体に研究の価値を見出すこともできるのです。

私の経験を書いておきましょう。

私の修士論文のテーマは、NASDAQに上場しているハイテクベンチャーの経営者たちが、どのようなモチベーションで(特に企業の業績と役職や報酬の面で)転職を行っているのか、その仕組みを究明することでした。

そのために、上場企業の有価証券報告書(SEC File)を過去5年分調べ、そこに記載されている経営者の経歴や役職、報酬額などの公開情報をすべてトレースしました。転職している場合には転職前の役職、報酬などもすべて調べ、どんどんさかのぼっていく手法をとりました。

分析のために都合のよい情報(データ)など存在しませんので、ひたすらSEC Fileを読み、データ化していく作業を行いました。その時点ではどのような結果が出るか、予想もできないままにです。

修士論文発表の際に教員たちから、「まさかこんな(クレイジーな)手法で調べたとは!」と驚かれたのを覚えています。まぁ、私の事例は極端ですが。

ということで、卒業研究で掲げたテーマ(疑問)を解明するために、必要な情報は何ですか? 例えば、何らかの事象を比較するためには、それぞれの事象にまつわる情報が必要です。

また比較するとして、比較の基準が異なれば収集する情報も異なります。しかしながら比較基準以外の項目は同じ情報でなければなりません。果たしてそのような情報をみなさんが得られるのかは、私にはわかりません。

もしそのような情報を得られないのであれば、「それに代わる情報は何か」を考えることでしょう。間接的な分析になりますが、「なぜそうなのか」を説明することは可能です。

さらにそれも不可能な場合は(まぁ、その時点で研究の質が大きく下がってしまいますが)、自分で情報を得ることを検討するべきでしょう。代表的なのは「アンケート調査」です。客観性を求めるのならば、とにかく多くの回答件数が必要です。できれば1000のオーダーで、最低でも100件程度は集めなければ、研究結果として説得力に欠けます。

さらにさらにそれも不可能な場合は(その時点で研究と呼ぶには大きな疑問がありますが)、少ない件数をより深く調査するという手法もあります。いわゆる「インタビュー調査」です。この場合、当初の仮説どおりを裏切る結論になるのであれば、研究としての価値はあります。それでも結論とすべきインタビュー結果が最低3件なければ、定性的な事実とはみなしません。(1、2件だと「たまたまそうだった」という判断です。このあたりはアバウトですが。)

インタビュー調査で、当初の仮説どおりの結論しか出ないのであれば、このテーマでの研究はあきらめてください。すでに多くの人が知っていることをインタビュー調査で研究するのは、自己満足としては意味がありますが、それに多くの人を巻き込むのは時間泥棒になってしまいます。

よく考えて研究テーマを選びましょう。

 


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