みんなシッカリしてくれないので、マイナンバー制度に関する改善案を考えてみた(後編)

Administrative Lawyer CIO Contribution Strategy

はじめに

前回の記事「みんなシッカリしてくれないので、マイナンバー制度に関する改善案を考えてみた(前編)」では、現在までのマイナンバーにまつわる出来事(主にトラブル)と今後起こりえそうな出来事(これもトラブルが主)について書きました。

スタートしたばかりのマイナンバー制度がほころびだらけのまま、突き進む勢いでいるため、これをなんとかしたいという思いで改善策を考えてみることにしましょう。

何がイケてないのか

さて、前回示した「既に起こってしまったこと」「これから起こりそうなこと」の原因を考えてみます。技術的な問題というよりも、制度的な問題の方が根が深そうです。

過剰な罰則を設定してしまった

国民が番号制度に対し、ここまで敏感に反応した理由のひとつに、過剰な罰則規定があります。

単に厳しい罰則があるということだけでなく、罰則を強めることで個人番号の取り扱いに対する恐怖心を植え付けてしまいました。

個人番号が情報汚染の要因となってしまった

個人番号自体は単なる12桁の番号なので、それ自体には価値はありません。しかし、それが個人情報と紐づけられた瞬間に「特定個人情報」として取り扱いがやっかいな情報となります。

私はこれを個人番号汚染と呼んでいます。今まで個人情報保護法にもとづいて取り扱っていた情報が不意にそれ以上の取り扱いを求められることとなり、対処しきれなくなってしまったのです。(さらに個人情報保護法が改正されて、特定個人情報がビルトインされてしまったので、今までの考え方自体も見なおさなければならないかも)

残念ながら一般の方は、情報に対して機密度をレベル分けし、複数のレベルに応じて運用を分けるという作業に慣れていません。「機密情報」か「そうでない情報」かぐらいしか判別することはできないのです。

となると、公開できる情報以外は全て機密情報扱い(ここ、論理的におかしいのは承知です。でもそうやってる)となります。その中には特定個人情報が含まれるので、4つの安全管理措置を施さなければならない(基本的に例外なし)という重荷を背負ってしまうという展開です。

頭のいい官僚(!)には理解できないかもしれませんが、市民や事業者(当然私自身を含む)はそこまで頭が良くありません。人間の運用でそれができると思ったあたりが読み違いだったのではないでしょうか。

結果、現在の対処は、こんな感じでしょう。

  1. こんな無理目の運用は誰もできないと予測し、世の中での管理レベルが馴染む(制度が骨抜きになるか市民の感覚が麻痺するか市民の意識が成熟する)まで放置する。
  2. 人間の運用では無理なので、情報管理ソリューションを導入。あるいは外部委託する。もちろんコストは掛かる。
  3. 「分類」という判断に誰も責任を負えないので、一律に機密情報扱いとする→業務効率は下がる→隠れて勝手に管理する人が出現する→その事実が発覚する→さらに管理体制が厳しくなる→業務効率が下がる…の負のスパイラルの末に、上記1.か2.に落ち着く。

個人番号を可視化してしまった

個人番号汚染とセットで考えるべきポイントです。

というか、この状況はもはやコントだとしか思えないです。個別の施策はそれなりに意味がありますが、それらを組み合わせるとどのような展開になるのかを考えていない(あるいはあまりに行政が縦割りすぎて横断的に考える人がいなかった)のでしょうかね。

繰り返しになりますが、個人番号そのものに価値はありません。しかし、個人番号は汚染源になり得るにも関わらず、その管理を市民に委ねたこと、そして番号が故意、過失を問わず他者の手により拡散可能な状態になっていることが問題なのではないかと考えています。そしてそれは、個人番号が可視化されていることにより生じている問題だと言えます。

そもそもの制度設計では、番号の拡散を抑止するために罰則を設定したのだと推察されますが、結果的にこのアプローチは逆効果になっています。

そのため、財務省による「消費税還付の仕組みとして小売店で番号カードを提示する」という案に過剰に反応してしまうのです。財務省の案は個人番号そのものを使わないはずですが、議論として混同されていましたよね? もしこれが、番号カードの券面に個人番号が書かれていなかったら、そして、そもそも私たちが自分の個人番号を知らないのであれば、もう少し違う展開になっていたような気もします。

疑義のある情報照会・情報提供に対して本人が異議を申し立ててもロールバックできない仕組みになっている

これは行政機関の間で行う情報連携の話。現時点では、行政機関が情報提供ネットワークを経由して情報照会を行った際に、その記録がマイナポータル(この名称自体、準備不足を如実に表しています)で確認できるとされています。

ただし本人ができるのは確認までであり、既に情報照会・情報提供を行なわれたとしても、本人はどうすることもできません。その情報照会が適正だったのかどうかも判らないですし、仮に適正と言えない情報照会がなされても、それを取り消すことはできなさそうです。

以前の記事「マイナンバー制度に関する議論の気持ち悪さ」でも、国民自身が国を信頼するか否かというところに帰結するという話を書きました。

行政機関の無謬性(行政機関はミスをしない)は信じるべきではありません。私自身は誠実に仕事をしますが、それと無謬性は別の話です。

この種の話は結局平行線に終わることが多いのですが、信頼できない相手から「私を信じてくれ」と言われても、何かの冗談としか思えないでしょう。一応言っておきますが、現在はその状態です。

社会保障関係の業務調査が不十分だった

残念ながら、これは非常に罪深い話です。仮に社会保障関係の業務実態を調査したと言うのならば、調査そのものがおかしかったのかもしれません。結果、プロジェクト後半になって、情報連携の仕様が変更になり、それでもまだ運用の実態に沿わない仕組みのままです。

また、自治体における社会保障関係の制度運用の方がおかしいというのならば、やるべきことは(国全体での)BPRのはずです。しかしそのチャンスもないまま、現在に至っています。

私見ですが、現時点のままでは情報連携の運用が効果を発揮するとは思えませんし、実際に自治体との情報連携がスタートする平成29年度でも状況に変化はなさそうです。

一方、税関係の方はどうなのでしょうか? 社会保障関係に比べて順調に進んでいるように見えますが、まだ判断がつきかねます。

ちなみに税関係の業務調査は、社会保障関係よりもゆるくて良いというのが、私の認識です。そもそも税は申告制度ですので、国民からの情報の正確性を国が保証する立場にありません。国民への給付もありませんからね。つまり、税関係の調査レベルで社会保障関係に挑んでしまったのが不幸と言えるのかもしれませんね。

他省庁の動きがかなり鈍かった

日本の省庁は、国民のために働く組織(!)なのですが、その手段として、まず自分たちが自らの信念に基づいて動けるように、省益を確保することを重視します。これが国益と省益のパラドックスです。

逆に言えば、省益に沿わない施策は「形だけの追従(ピーター・センゲ)」の態度をとることがあります。ここに純粋な組織間力学が働くことになります。

外野からの見立てなのでかなり無責任ですが、番号制度の場合は、内閣官房(社会保障改革担当室)と総務省がプランニングし、それに財務省(国税庁)が乗っかったように見えます。法務省は比較的距離を置き、厚生労働省は直接火の粉をかぶる立場に、文部科学省は受身なのに巻き込まれ、その他の省庁は傍観しているという構図です。

なぜそのような構図になっているのかについては、詳しく書くつもりはありません。

ただ結果的にシステムの実装において多くの妥協が重ねられることになりました。社会基盤の整備において、この種の妥協が有効だとは思えないのですが…。

ここでマイナンバー制度に関する改善案

ということで、改善案を考えてみましょう。

基本的な方針

個別の案を示す前に、基本的な方針を確認しておきます。これは私個人の思いが強く反映されています。

そもそもこの制度の名前からして、もはや羊頭狗肉の感があります。「社会保障・税番号制度」ですが、税ばかりが先行してしまい(年金などの)社会保障は後手に回っています。番号制度というものの、番号カードの多目的利用が先に論じられている状況も不安定です。

そこで、示すのがこれらの方針です。

  • あれこれ欲張らずに「社会基盤の整備」という目的に立ち戻る
  • 国民に過度な負担を掛ける運用は行わない
  • 多様な考えを持つ国民に対して、納得感を持ってもらうために、一方的な価値観を押し付けない、寛容な仕組みを考える
  • 適切なインセンティブ設計にもとづき、システムや制度を考える

ということで、個別の案を順に示します。

個人番号は不可視に切り替える

12桁の個人番号を不可視に切り替えましょう。これだけで多くのトラブルを回避することができます。またすでに付番している番号は、希望者は不可視にする段階で変更できるようにすればよいでしょう。

発行済みの番号カードは番号部分をマスクする(目隠しケースじゃないですよ)か、再発行することで対応することになります。再発行は一斉である必要はありません。

ちなみに不可視になったら、個人番号は「番号」である必要すらありません。せっかく公的個人認証の電子証明書が番号カードのICチップに入るわけですから、それを使えばよいのです。電子証明書は2種類入るのをご存知ですか? 署名用と利用者証明用です。これらの利用範囲は限定されていません。

市民からの申請の際には、ワンタイムコードを使用する

個人番号が不可視になると、申請書類や申告書類に個人番号を書くことができません。

「それじゃダメじゃん」とおっしゃるかもしれません。しかし、それらの個人番号はどのように使われるのかはご存じですか? そもそも何のために書類に個人番号を書く運用になるのでしょうか?

また、事業者は従業員の個人番号を集めて、管理しなければならないとのことですが、それは何のためなのでしょうか? ヒントは番号収集時に行われる「番号確認」と「本人確認」です。つまり「特定の個人を識別する」ことが目的なのです。

今までは本人を識別する仕組みとして、氏名、住所、性別、生年月日という4情報を使っていました。しかし、氏名は婚姻等で、住所は転居で、性別は申し立てにより変更することができます。つまり4情報では人間の目視で履歴を追わないかぎり同一人であるかを識別することができなかったのです。

そこで「原則として一生変わらない」個人番号を用いることで、システマチックに同一人を識別することが求められたのです。(番号変更事例が多くなるということは、この原則が崩れることを意味しています)

一方、多くの方が心配している「個人番号をキーにして情報が紐付けられる」という件については、今のところそういう仕組みではないとされており、個人番号は使われないようです。(伝聞形。なぜならば私自身が現物を見ていないから。私は現物を見ない限り最後まで信用することはしません。それがシステム屋の姿勢です)

正確に言えば、単一の行政機関内では「団体内統合宛名番号」と呼ばれるその行政機関内だけで使用する番号を用いて本人を識別し、情報連携しています。この番号は個人番号とは無関係(少なくとも私が関与している自治体は無関係にしている)です。

(団体内統合宛名番号という用語は番号制度で出現したものですが、多くの自治体は行政サービスの向上、維持のためにこれまでも独自の宛名番号を付番して情報連携しています。転入してすぐに国民健康保険の手続きや児童手当の手続きができるのは、こうやって情報連携しているためです。これは伝聞形ではなく事実です)

また行政機関をまたがる情報連携では個人番号とは異なる「符号」と呼ばれるコードを仲立として情報照会、情報提供が互いにできるような仕組みになっているようです。(伝聞形。なぜならば私自身が現物を見ていないから。私は現物を見ない限り最後まで信用することはしません。それがシステム屋の姿勢です)

ということで、個人番号が流れる場面は、「個人」-「勤務先」ー「行政窓口」の間に限定されます。つまり、この部分で個人番号の代替手段があればよいのですね。

前置きが長くなりましたが、ここで私が提案するのは「ワンタイムコード」です。仕組みは単純で、番号カード上の電子証明書と情報提出先の行政機関コードを元に申請用番号(ワンタイムコード)を事前生成しておくのです。事前生成は行政機関のサイトで行います。

事前生成の段階で、ワンタイムコードと電子証明書に記載された本人の情報は行政機関側でひも付けするようにしておき、申請者は申請書類にワンタイムコードを付しておけば、個人番号を示すことなく特定の個人を識別できます。

ワンタイムコードを情報提出先の行政機関ごとに生成するようにしておけば、同じ個人番号をあちこちの行政機関に示す必要がなくなりますし、コードの有効期限も設定できます。コードの再生成も自由にできます。コードを預かる事業者も、そのコードは汚染源になるわけでもなく、他に使い途もないわけですから、気楽に扱うことができます。

この案の場合、一連の作業を情報技術に疎い方(例えば高齢者)に委ねるのはかえって負荷をかけることになるのかもしれません。ただ、番号カードを持って窓口にさえ来てもらえれば、個人番号は不可視のままで運用可能ですし、そもそも番号を使わないこれまでどおりの申請行為も可能です。また、簡単に窓口にいらっしゃれない方への何らかの支援は必要ですが、それは社会基盤が整備されたうえで有効に機能するものだと考えます。

番号カードを発行せず、通知カードだけを用いている人は電子証明書がありませんので、この手法は使えません。券面に記された個人番号を廃止し、この12桁の数字の列を乱数表に見立てて、同じようにワンタイムコードを発行する方法も考えたのですが、本人情報が載らないのですね。番号カードの発行が一般化しない限り、もう少し考える必要がありそうですが、これは取り組む順番の問題とも言えます。

また番号カードを持っていない人が窓口へ来た場合、既存の方法で本人確認さえできれば、個人番号はそもそも不要です。民間でも非対面の本人確認は、本人しか知り得ない情報で確認することで足りるとされていますので、特に支障はないはずです。

情報連携の際には事前にオプトアウトできる権利を市民に与える

地味だけど、これが最も重要だと思うポイントです。

上述した基本方針にも示しましたが、多様な考え方を持つ方に一方的な価値観を押しつけないことが必要です。これは以前書いた記事「マイナンバー制度に関する議論の気持ち悪さ」でも書きました。管理されると感じる人、保護されると感じる人の双方に納得してもらえなければ、社会基盤の整備なんて、単なるまやかしです。

そこで、行政機関をまたぐ情報提供、情報照会の際には、その連携を認めるか否かを本人が選択できる仕組みを構築するべきです。この連携可否の選択を行うために、マイナポータルを使います。

今のところマイナポータルでは、情報連携の内容を事後で確認することしかできないようですが、これは無意味です。自分の情報を管理されていると感じる人は、自分が制御できない状況を嫌うのです。仮に自身が納得できる情報連携であるならば、それを受け入れることもできるでしょう。また、保護されていると感じる人も、本来は無条件に情報連携を望んでいるわけではなく、セットメニューだから仕方なく選択するのかもしれません。

運用のイメージは次のとおりです。情報連携を望む行政機関がある場合、連携開始前に(例えば1ヶ月前とか)情報連携の可否をマイナポータル上で本人に諮ります。本人は連携の内容や目的を確認した後に、情報連携を認めるか否かを設定します。

選択期間を経過し、本人からの回答がない場合には、予定どおり情報連携を行います。つまり事前にオプトアウトできる仕組みを用意するのです。

技術的には難しくありません。現在もDV被害者の方たちのために、情報提供を無条件で行わない仕組みが情報提供ネットワークシステム(中間サーバ)にありますので、その制御をマイナポータル経由で行えるようにすればいいのです。

マイナポータルを使うということは、番号カードおよび公的個人認証サービスを使うということです。つまり、自己の情報の取り扱いに敏感な市民は率先して番号カードを取得するようになるでしょう。

また、上述したワンタイムコードも番号カードがあれば使えるようになりますので、番号カードを交付するインセンティブも働きます。

10年ほど昔、電子申請システムを省庁や全国の自治体が導入したにも関わらず、ほとんど使われなかった際に、行政機関が出した結論が「住基カードや公的個人認証サービスが普及しないため、電子申請も普及しなかった」でした。

一方、住基カードや公的個人認証サービスが普及しない理由として「電子証明書を使って利用できるキラーコンテンツ(電子申請など)が普及しなかった」としているのです。つまり、これらは鶏卵の関係にあります。

当時、市井の行政書士として電子申請を研究していた立場から言えば「こいつら全員バカか、悪意ある税金泥棒だな」と思っておりました。e-Taxしかキラーコンテンツと言えるものもなかったわけですし、それでも状況は変化しなかったように感じます。

(行政書士の業界では電子定款の認証、司法書士の世界では登記申請などもありますが、あくまでもプロ向けの話です。そう考えると法務省はある意味よくやっている)

私が上述した基本方針のうち「社会基盤の整備」にこだわるのは、これが理由の一つです。社会基盤の整備の先に、社会保障の課題解決や税の不公平感の解消があるのです。

「でもオプトアウト方式だと、税金をチョロまかしている奴らから税金取れないじゃん」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。事実、そのような発言を見聞きします。

こういう話を知人の外国人にすると「本当にお前は頭悪いなー」と言われました。

知人「お前、いつから徴税者になったんだ? それとも公務員は生涯賃金が頭打ちになってるから、高額所得者に対してルサンチマンでも抱いてるのか? お前らがくだらねえことで無駄遣いしてるから、税金が足りなくなってんだろ? まずお前らの仕事ぶりをなんとかしろよ(英語なので口調と文脈からこんな風に翻訳しました)」

私「むぐぐぐぐっ」

この知人の暴言に軽く憤死したところで、確かになぜ番号制度は拙速に進められてしまうのだろうという素朴な疑問も抱いた次第です。もちろん、社会保障の課題解決や税の不公平感の解消を無視してよいわけではありません。ただ、それらは適切なインセンティブを設計することで解消することができると考えます。

例えば、国税庁に対する情報連携をオプトイン/オプトアウトした場合、所得税の控除額に差をつけるというのはどうでしょう。既に青色申告者には特別控除制度(65万円)もあります。青色申告者は複式簿記による記帳が義務付けられており、課税額の捕捉が白色申告者や現金主義の事業者よりも容易であることがその理由でしょう。

番号制度により課税額の捕捉率が上昇するというのならば、特別控除額はもっと高く(つまり税額が低くなる)してもよいはずです。その逆もありますけどね。

「こんな仕組みを入れるとコストが掛かる。ムダなのでは?」という考えもあるでしょう。確かに、公的個人認証サービスを基礎とした仕組みやワンタイムコード、情報連携のオプトアウトの仕組みはこれまでには無かったものです。ただ、私はこれまでの取り組みを全てひっくり返すことは望んでいません。これは(繰り返し書いてるけど)社会基盤の整備に向けて市民に納得してもらうための仕組みだという認識です。言い換えると、今までの検討の詰めが甘いから、困ったことが起こるわけです。

また、オプトアウトの仕組みが確立されるのならば、情報連携の適用範囲を法令や条例で個別に定める必要はありません。利用目的の許諾は当然オプトアウトの段階で行うことができます。よって法令上の制約で(本来ならば適用効果の高い)業務に使えないという不幸な事象も解消できます。

一方、法人番号について本来は法務省(法務局)で付番を行うことが制度的にもシステム的にも洗練されているのに、国税庁が付番主体になってるでしょ? これは省庁間で妥協がなされた結果です。省庁間での仕様には妥協できるのに、国民との間では妥協できないというのは、少し国民を軽んじてはいませんか?

これまでも利用者(市民)がどのように考えるのかを軽視してきた結果が、住基カード、公的個人認証、電子申請など、死屍累々と積み重なる利用率の実績です。もうこういうことを繰り返したくありません。

情報連携がもっとシステマチックに行えるよう、システムを簡素化する

明らかに現在の仕組みのボトルネックは情報提供ネットワークシステムによる情報連携の部分だと考えています。

実はこの部分はまだよいアイディアがありません。というのは、実際に情報提供ネットワークシステム内で情報連携がどのように行われるのかが判然としないので、具体的な改善案を示せないのです。

現在構築中の情報提供ネットワークシステム、中間サーバの構成は番号制度が企画された当時からあった「番号制度により国民の情報を一元管理するのではないか」という懸念を払しょくするために考え出された方式です。

その配慮自体は必要なことだと思いますが、全国の行政機関の中間サーバが東西の拠点により集約する方式に切り替わったことにより、分散管理と言いつつも、外形的には一元管理のように見えてしまうというのは、大きな変化(妥協?)だったように思います。

団体内統合宛名システムの仕様や、インターフェース仕様書に記されている内容をもとに想定してみると、情報連携はかなり不自由な仕組みになるようです。情報提供ネットワークの利用を強制すると、少なくとも一時的には行政機関の業務効率は低下するでしょう。

ひとつ言えるとすれば、情報連携の単位を現在の仕様にしたのは失敗だと思っています。行政機関の業務はまだまだ紙の申請書、紙の添付書類(証明書)を前提に構築されています。このままですと、情報提供ネットワークで得られた照会情報と紙の証明書が混在して運用されることになりますが、各行政機関ではそのあたりのBPRが進んでいるとは言えません。結局、照会情報は紙で出力し、課内の決裁に回るという自治体が大半でしょう。

ならば、情報連携の単位や項目は紙の証明書に記載されたものと同じであることが望ましいのです。そのため「中間サーバ連携のインターフェース仕様は今後大幅に変わる」と私は予想しています(あくまでも私の予想であり、この予想に責任は負いません)。この部分に現時点で工数を掛けるのは得策ではないという判断です。

あるいは、もっと情報提供ネットワークシステムの仕組みをシンプルにし、単なる行政機関間の文書照会支援システムをクローズドネットワークで稼働させた方がよいかもしれません。

仕組みは単純で、従来から行われてきた文書照会をオンラインで行うだけです。あらかじめ情報提供用のデータを中間サーバに置くのではなく、照会依頼に基づいて個々に提供データを用意して送信するだけの仕組みがあればよいでしょう。今のところ、フルオートメーションで行政事務が回る制度になっていないのですから、これでも十分機能しますし、オンラインである分、応答に要する時間(通信時間)を短縮する効果もあります。

拙速な取り組みでBPRを後回しにしたツケは今後返していく必要がありますが、ここまで投資したのですから「使える」仕組みにしなければ許されません。

いずれにしても、こんな基本的な業務分析もできていないのに、連携の仕様を作るなんてどうかしている、というのが私の率直な感覚です。(私の思い込みも入っていますので、違っていたら教えてください)

まとめ

「個人番号の不可視化」「情報連携の事前オプトアウト」により、番号制度に関する混乱やリスク、懸念を払しょくするとともに、番号カード交付のインセンティブを高めて社会基盤の構築を目指す、というのがおおよそのサマリです。

もちろん私の案が最も優れていると言うつもりもありませんが、今のままがよいとも思えません。引き続き、よい方策を考えていきたいと思います。

 

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