みんなシッカリしてくれないので、マイナンバー制度に関する改善案を考えてみた(前編)

Administrative Lawyer CIO Contribution Strategy

はじめに

いきなり余談から入るのですが、どうやら番号制度の関係者(誰かは知らないけど)が私のブログを見ていて、何かのヒントにしているらしいという小耳に挟みました。何のヒントなんだか…。

今回の記事はそんな関係者の方々にどのように受け止められるのか、ちょっと気になるところです。

タイトルにもあるように、まだ制度も始まって間もないうちに改善案を示すというのは勇気がいることなのですが、いろいろな課題を抱えながら騙し騙し進めていき、国民の関心が薄れることや(ある意味)諦め、現状に慣れるのを待つことを望むという展開では、さすがに国民の理解を得ることは難しいでしょう。

マイナンバー制度は「国民生活を支える社会的基盤」となるものですが、今のままではその道程は遠いと言わざるを得ません。

非常に言いづらいことですが、この施策の進め方は、e-Japan戦略に基づく電子申請や住基ネット、自治体クラウドと同じような展開になりそうな予感がするのです。

そこで、これまでに何をしくじったのか、そしてこの状況から「国民生活を支える社会的基盤」を目指すにはどうすればいいのかを考えてみようと思います。

これまでに生じた出来事

まず、これまでに何が起こったのかを挙げておきましょう。

マイナンバーに便乗した詐欺事件が発生し、被害者が出てしまった

多発している「マイナンバー詐欺」の手口と対応策(マイナビニュース)

本当に悲しい。詐欺の可能性はこれまでも指摘されていたところだけど、結局犯罪を防ぐことができませんでした。

自動交付機のミスでマイナンバー付きの住民票が誤って発行されてしまった

マイナンバーで初のトラブル、取手市が69世帯の住民票に個人番号を誤記載(ITPro)

マイナンバー記載の住民票を誤って交付 札幌・厚別区(NHK)

人為的なものを含めて同種のトラブルがなぜかあちこちで発生しています。注目すべきは、いきなり番号変更事象になりそうなところです。

財務省の消費税還付の運用に番号カードを使う案は、撤回されることになった

まず制度開始前の9月にこんな話題が。この案に各方面から大反発。

食料品の軽減税率、マイナンバーで還付 「手続きが面倒」「レジが混乱する」と否定的な声(JCASTニュース)

そして、結局方針転換。軽減税率制度へ進む可能性が出てきました。

自民新税調会長 軽減税率導入へ態勢立て直せ(読売新聞)

「マイナンバー汚職」と呼ばれる事件が明るみになったが、実際番号制度と関係があったのかどうか…

【マイナンバー汚職】塩崎恭久厚労相が謝罪 マイナンバー制度への影響は否定(産経ニュース)

3年前の収賄事件がサブマリンのように現れた事件。一連の報道が事実ならば、倫理観の無い奴に掛ける言葉はないですね。

…と、言いたいことはいろいろあるけれど、まずは事実をおさえておくだけにします。

これから生じるかもしれない出来事(妄想)

さて、これから生じるかもしれない出来事は次のとおり。トラブルが生じないといいけど。

番号通知が届かない/誤って届いてしまう

現住所地あてに郵便(書留)で送るらしいですが、未達あるいは誤配送のトラブルは生じるだろうと思われます。日本の郵便制度は優秀だと思うけど、民営化前のレベルのままを信じている人が多いと思われるので、過度に期待するべきではないでしょう。

住基コードの時は比較的スムーズに配送された記憶がありますが、その時と外的環境(DVやストーカー問題など)は変化しているので、本当に回避できるのかどうか…。

「DVの当事者の方向けの対策はやってるじゃん」と言われる方もいらっしゃいますが、それは当事者の論理ではありません。深刻な事件が起こった後で、同じことを言えるのでしょうか。少なくともフェールセーフの考え方はここにはありません。

やっぱり番号を教えてしまう詐欺事件が発生

電話口で「番号を教えて」と”役所の方から来た人”に言われて、詐欺だと気づかない方は多くいると思われます。

ちなみに、個人番号そのものには財産的価値はないので、この行為を詐欺とすることには異論があるかもしれませんが、その後、

自分の番号を知っている人=信用に値する人

という「フットインザドア」あるいは「権威による服従」をさせることで、次の詐欺事件を喚起するきっかけにはなりそうです。

マイナンバー自爆テロにより、自ら番号を公開してしまう猛者が出現

アイスクリームの冷蔵庫に入っちゃう写真を公開する方がいらっしゃるわけですから、この程度の自己顕示行為は当然起こりうるでしょうね。

制度開始後、数日も経過しないうちに番号変更の前例が出てきたわけですから、理由の如何を問わず、番号を変えることになるのでしょう。

システム屋として心配なのは「原則として一生変わらない」ことを前提に制度やシステム設計しているはずなので、今後このような事象に対応しきれるのかどうかですね。

偽の番号を公開することで意図しない名寄せをジャミングする知恵者(?)が出現

個人的には、バカバカしいながらも案外無視できない事象です。

番号の漏えいが発覚した場合、その番号を回収することは不可能です。仮に番号の変更ができない場合には、自衛の策として「デタラメな番号を自分の番号として公開する」というジャミングが有効なのかもしれません。

例えばこんな感じ。Javascriptなので、テキストエディタにコピペしてブラウザで表示させれば動きます。チェックディジットの計算方法は公開されているので、悪用のしようがないと思いますが、念のため悪用禁止です。

<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
    <meta charset="UTF-8">
    <title>Say My Random Number</title>
    <script>
        function create_random_number() {
            var target = document.getElementById('target');
            var n;
            var rand = [];
            var q;
            var m;
            var sum = 0;
            var seeds = "";
            for(n = 1; n <=11; n++) {
                rand[n] = Math.floor(Math.random() * 10);
                q = n >= 1 && n <= 6 ? n + 1 : n - 5;
                sum += rand[n] * q;
                seeds += rand[n];
            }
            m = sum % 11;
            r = m <= 1 ? 0 : 11 - m;
            var random_number = seeds + r;
            target.innerHTML = random_number;
        }
        window.onload = function() {
            setInterval(create_random_number, 10000);
        }
    </script>
</head>
<body>
    <p>Hello, I'm Hiro KAWAGUCHI.</p>
    <p>My number is as follows.</p> 
    <div id="target"></div>
    <p>It is all nonsense.  Just kidding.</p>
</body>
</html>

番号カード交付で役所の窓口が戦々恐々とする中、来庁者が少なくて期待はずれに終わる

現時点での私の予測は「番号カードの発行数は控えめになる」というものです。少なくとも直近で混雑する場面は少ないのではないでしょうか。すぐにカードが必要な人は少ないでしょうし。

とは言うものの、役所の窓口での準備には万全を期するべきです。

番号カードの顔写真に面白い写真を載せてしまい、交付時に一悶着ある

顔写真の受入規格を厳密にしておらず、ネット経由で発行申請が可能ということもあり、かなり気軽な写真を送ってくる可能性はあります。いざカードができあがり、受け取り(交付)する際に本人との照合ができず、困ったことになるかもしれません。

プリクラで加工した写真が送られてきた場合、目の大きさの違いをどこまで許容できるかは微妙なところです(これは冗談)。

あるいはせっかくなので「奇跡の一枚」を番号カードにしようとする方もいらっしゃるでしょう。その際、本人じゃないと判断されたら、それはそれで悲しいことになります。

中間サーバインターフェースの仕様の確定が遅れ、行政機関のシステムが完成しない

これはかなり深刻な問題。プロジェクトマネジメントの教科書的には、悪いプロジェクトの例として挙げてもよいぐらい。

とにかく根の深い仕様変更がプロジェクトの後半になって判明して、それらに自治体や自治体システムを扱うベンダーは振り回されています。最悪の場合には納期内に完成できないところも出てくるかもしれません。

自治体の職員は根が真面目な人が多いので、くれぐれも自分の責任だと抱え込まないようにしてください。他よりも抜きん出ている自治体は(私の知りうる限り)ありません。

逆に現状に対して、うまくやりきっている自治体があるようならば教えてください。その場合、繋がってはいけないルートが繋がっている可能性があり、別の問題として深刻です。

情報連携の仕組みが役に立たず、結局使われない

誤解を与えるといけないので補足しておくと、長期的な視点では(内容や規模にこだわらなければ)情報連携は使われるようになります。ただし、全国的に直近の投資に見合った効果が得られるかは、自信を持ってそうだと言い切れません。「社会的基盤=インフラ」への投資ということで、すぐに投資が回収できるものではない、という意見もありそうですが、それでも少し費用を掛け過ぎなのでは…。

私が見る限り、壮大な計画を実装に移した際に、妥協に妥協を重ねた結果が今の仕組みなのです。随分と不自由な仕組みになってしまったようなので、当面そのしわ寄せは運用に来ることは間違いないでしょう。

ちなみに私が関与している自治体では、いかなる場合でも投資対効果を得られるような工夫をこらしています。少なくともその努力は怠っていません。

 

…ということで、随分と妄想が入ってしまいました。深刻な話を冗談ぽく、あるいはその逆のように書いているところもあります。

まとめ

ちょっと長くなりそうなので、後半は次回

後半で、これらの出来事がなぜ発生してしまうのか、そして現時点からこの制度を立て直すにはどうしたらいいのかについて考えてみることにしましょう。

断っておきますが、私はかなり真剣です。

 

photo by:

« »