情報システム調達:提案公募での業者選定手法はこれまでの呪縛を打ち破れるか(6)

前回の記事「情報システム調達:提案公募での業者選定手法はこれまでの呪縛を打ち破れるか(5)」の続きです。
架空の自治体、自治市のお話です。前回は自治市における新たな公募型プロポーザル方式での調達に臨むプランについて書きました。
そしていろいろと苦心した後に、実際に公募型プロポーザルを実施したのです。今回はその顛末について記しておきます。
これまで提案依頼事項や評価基準が曖昧であるがゆえに、本当に欲するシステムが導入できなかったり、導入後になって仕様に対するお互いの認識のズレが発覚したりというトラブルを引き起こしていました。
一方、曖昧であるがゆえに、評価に対する解釈をギリギリまで留保できる(言い換えると、いかようにでも評価に手心を加えることができる)という発注者側の隠れたメリット(?)もあり、まぁ低く緩いクオリティで競争性を確保した調達が実現できていたとも言えます。
架空の自治体を例にしながら、こういう書き方をすると問題ですが、対外的には競争性を確保した調達が実現できていると言ってても、内情は相当いい加減な運用がなされています。(もちろん悪意があってそうしているわけではなく、本当に無知であるため、どうしたらよいのかがわかっていないのです)
幸いにも自治市は架空の自治体です。まさかと思いますが、このような運用をされている自治体がありましたら、早急に改善する手立てを講じた方がよいと思います。
さて、前置きはここまでにして、本題に入ります。。
前回も書きましたが、今回の案件では庁内の情報システムをまとめて稼働させるための基盤システム(機器、ソフトウェア)を調達したのです。
全体的な配点の構成は、
提案書に基づく評価   1000点満点
うち、要求事項評価   800点満点 (定性評価)
提案事項評価   200点満点 (定性・定量評価)
見積額に基づく評価   1000点満点 (定量評価)
です。
財政状況が潤沢でない自治市にとって、導入にあたる経費の削減は重要なミッションです。そのため、提案書評価:見積額評価=1:1とせざるを得ませんでした。
その代わり、MUSTである要求事項を手厚くすることで最低限のスペックを確保することを狙っています。配点だけをみるとほとんど一般競争入札に近い状態ですね。
なお、公募型プロポーザル方式はあくまでも随意契約の候補者を選定するために行われるものであるため、実際の契約に際しては改めて仕様の協議を行うこととなります。
RFPを作成し、評価基準、配点ウェイトを決め、審査委員会を立ち上げるために、内部から2名、外部から3名の審査委員の就任をお願いしました。
審査委員の選定も実は苦労したところです。外部からの審査委員を招聘するのは相当のコストがかかります。結果的に近隣の有識者にお願いすることとなるのですが、なかなか適任の方がいらっしゃらない。
私が以前からお願いしようと思っていた大学の先生は病気療養のため就任できないことがわかり、当初は途方に暮れてしまいました。最終的には同じ大学の先生を推薦いただけることで落ち着きました。
提案依頼の公告後、RFPに対する質問受け付け、回答を経て、最終的に数社からの参加表明をもらいました。競争性が働くことが期待できる十分な状況です。
その後、正式に参加表明を行った事業者にプレゼンテーションをしてもらい、審査委員会にて評価基準に基づく評価を行ってもらいました。
プレゼンを実施する場合の留意事項ですが、これまでの自治市ではプレゼンにおける内容までを評価の対象とする雰囲気がありました。いや、評価項目には入っていないのですが、全体的にプレゼンの雰囲気がさまざまな領域にバイアスを与えていることが多かったのです。
そこで今回の案件ではプレゼンの内容は評価に影響を与えない(少なくとも提案書に書かれていない内容の発言は評価しない)という取り扱いを徹底してもらいました。
プレゼンは提案の内容を伝える技術であり、営業トークの場所ではないのです。
いろいろと紆余曲折ののち、ようやく候補者と次点者を選定することができました。