経験により学んだこと(7)-あの借用書は行政との信頼を損ねやしないか?

Administrative Lawyer Contribution

政治資金規正法に抵触するか否かの問題は別の議論としておきます。私には語るだけの見識を持ち合わせていませんので。

そして借用書の真偽についても、ひとまず別の議論としておきます。そんなのは、現代の技術でいくらでも調べられます。

行政書士としてコメントしておきます。

「あの借用書は行政との信頼を損ねやしないか?」

行政書士が携わる業務の中に、建設業許可申請というものがあります。東京都内に営業所を有する建設業者は東京都知事の許可を得て事業を営んでいます。

行政書士を長く経験すると分かるのですが、建設業許可を得るためには過去の実務経験の有無を問われることがあります。つまり、過去に建設工事に携わっていたことを申請者(許可を取りたい業者)が疎明しなければならないのです。

過去の事実を疎明するにはどうするのか?

多くの場合、過去にその事実があったことを裏付ける物的な資料(あえて言えば「証拠」)を示すことになります。

具体的には「7年前に防水工事を確かに請け負っていたことを疎明するために、当時の工事発注書や図面、銀行通帳の入金記録などを示す」というような行為が行われています。

ただ、7年前ぐらいになると当時の書類は全て処分されてしまい、事実を疎明することが困難となることも多いのです。そのため、建設業許可が得られないケースをいくつも見てきました。

申請者にとって建設業許可は遊びではありません。事業者はいつでも生きるか死ぬかぐらいの覚悟で仕事をしており、建設業許可はビジネスチャンスを拡大できるか否かの重要な行為なのです。

実際、事実が疎明できずに、窓口で悔し涙を流すおじさんもいるのです。

そうなると、易きに流れる申請者がいるのも事実で「資料が見つからないのならば、資料があるようにすればいい」と、なぜか忽然と当時の工事発注書が現れたりするケースもあります。

東京都の窓口では、当然のことながら、その種の書面は拒否しています。拒否しないとこの許認可制度が崩壊してしまうからです。

もうお気づきでしょう。

私が懸念しているのは、あの借用書を示したことで、東京都の窓口であのレベルの書面を拒否できなくなってしまうのではないか、ということです。東京都の窓口が毅然とした姿勢でいられるのは、行政にそれだけの「信頼」があるからです。

事実の有無や真偽はともかく、行政の信頼を損ねるような行為につながるのであれば、とても残念なことです。

 

私は25歳の時に自分の行政書士事務所を開業して、いくつもの失敗と反省を経験しながら10年以上を掛けて、誠実であることや信頼を得ることを身をもって学びました。

私が自らの職務において、何よりもこの「誠実」「信頼」に重きを置いているのは、これまでの経験によるところが大きいのです。

私のような意志の弱い人間は、それだけ時間を掛けなければ得られなかったものなのかもしれません。おかげで、学んだことは現在の職務の中で確実に活きています。

画像出典:https://twitter.com/george_10g/status/405223852591955968/photo/1

 


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