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last edited 4 years ago by kawaguchi

評点アップのための企業戦略

  1. 現状分析

    今までの事柄を踏まえて、これからの建設業者の企業戦略はどのようにおこなうべきなのでしょうか?

    まず、経営事項審査では、自身の会社のどの部分に問題があるのかを分析し、改善計画を立てます。その後、改善計画によりどの程度の効果を得られるのかをシミュレーションを行うことでチェックし、実行に移します。さらに、実行後の社内状況を分析し次への改善計画を立てる、というプラン・ドゥ・シーのサイクルで進めるというのはどうでしょう?

    現状を分析するのは大切です。さきほどの結果をもう一度ごらんになって、現状の分析を行ってみてください。

  2. 激変緩和措置

    どの会社でも取り組むことができる短期の戦略として、一番最初に激変緩和措置が有効であるかどうかは確認してみてください。

    激変緩和措置の組み合わせ表

    バブル崩壊後、建設業界では財務体質の改善、職員の削減などのリストラ策を推進してきています。激変緩和措置は、このリストラ策に伴う合理化、不採算部門の整理などの経営努力を行っている企業が経営事項審査で極端に不利な扱いにならないようするための措置として平成10年7月改正時に導入された制度です。

    年間平均完成工事高を求める際に基準決算前2年分の平均か3年分の平均かを選択できます。同様に、自己資本額も審査基準日時点の額か前二期分の平均、職員数・技術職員数も審査基準日時点の人数か、前二期分の平均かを選べるようになっています。

  3. どの会社でもできる短期戦略

    実は、紙の上で調整できるのはここまでで、短期戦略と言っても最低でも1年程度の期間を見た戦略となります。

    ここからは、私の経験をふまえてのお話にもなります。

    私は今までいろいろな会社の経営事項審査シミュレーションと企業戦略をたててきていますが、どの会社でも心がける基本的なポイントを次に申し上げます。

    • 自己の施工技術能力を積極的にアピールしよう

      まず、自己の施工技術能力を積極的にアピールして、有利な条件で仕事を受注できるようにすることです。

      経営事項審査では技術力というのはあくまでも技術者の配置数に関連するものであり、施工技術能力そのものを評価するポイントになっていません。しかしながら、もし独自の工法、施工能力に自信があるのならば、それを対外的に大きくアピールし、多くの現場で有利な条件で受注する方針を目指すのは非常に有効です。

      現在付き合いのある業者・業種以外にも広くアピールするということだけ心がけることでもよいと思いますよ。

    • 赤字受注は絶対にやめよう

      よく業者の方から『今回の受注は赤字覚悟だよ』とか『収支はトントンだけど、遊んでいるよりもマシだから』のような声を聞きます。

      景気のよい時期は一方の工事現場が赤字であっても、他の現場で利益を出せばトータルで回収できる、という考えもありますが、現在は一つ一つの工事現場での利益管理を厳格にし、どんぶり勘定の経営から脱することが必要です。まず、経営者は『売上―原価=利益』という考えではなく、『売上-利益=原価』であるという意識をもってください。

      利益計算の図

      工事の請負金額から、まず利益目標に基づく利益を確保し、原価を策定しその原価で施工可能かどうかの検討を行うべきでしょう。

    • 仕事のないときは営業をしよう

      では、仕事のないときはどうすればよいのでしょう。遊んでいる、というのは論外ですが、ぜひとも技術者も営業をするようにしたらよいと思います。

      営業となると少し敷居が高い?

      なにも飛び込み営業をしろというわけではないんですよ。今まで施工した顧客のリストを整理して、そこにアフターフォローということで挨拶に行くことでも有効です。新築住宅については住宅品質確保促進法により瑕疵担保責任を10年間求められるのですが、逆にこれを利用して定期的に顧客訪問をするというのもよいと思います。

    • 工事代金の回収を早期にしよう

      工事代金の回収をできるだけ早期に行うことが必要です。

      そんなこと言われなくても。。。

      まずは、下請から元請に転換する努力をしてください。これは先ほどの営業をする、ということにもつながっていますが、現金で取引ができる元請業者に転換できるのであれば、それだけでかなりの有効打となりますね。

      また、他社と差をつけるための企業の独自性を出して勝負する必要もありますね。同じ下請工事であっても独自の施工技術がある、優れた技術品質がある、などがあれば元請に対して有利な交渉ができます。

  4. 経営状況Yに関する評点アップ

    では次に、シミュレーションを使って経営状況Yに関する評点アップを考えてみることにしましょう。

    なぜ経営状況Yの評点アップを考えるのでしょう?

    実は工事売上が前年より低下しても経営状況Yの評点がよければ、総合評点Pがそんなに落ちないのです。無理な受注をして丸投げ同然に下請に出し、工事売上だけを上げても、それは収益性を下げるだけで何もよい効果を出さないということはわかりますか?

    これが以前から言っている、国が求める建設業のありかた、です。

    さらにいうと、完成工事高X1を上げるのはこの時代非常に困難ですし、技術力Zを上げるために技術者の雇用をするというのは経営を圧迫します。その他の審査項目Wについてはすべてを網羅すれば満点以上にはあがりません。経営状況Yの評点はそれだけ重要である、と考えてください。

    では、具体的な事例を見てみましょう。

    1. 収益性の悪い会社の戦略

      まず、この画面を見てください。

      収益性低の4指標レーダーチャート

      4つの要素のうち、収益性が比較的よくありません。では、収益性を改善するためにはどうすればよいかを解説しましょう。

      収益性を構成する3つの指標を覚えていますか。

      • 売上高営業利益率
      • 総資本経常利益率
      • キャッシュフロー対売上高比率

      売上高営業利益率を上げるというのは、いかに利益を上げることができるか、ということです。考えられるのは、変動費を縮減して粗利を上げるか、固定を縮減して営業利益を上げるかです。変動費の縮減は徹底した原価管理しかありません。材料費、外注費も複数からの見積もりを元に発注することはやりましょう。

      総資本経常利益率ですが、通常営業利益が上がれば経常利益も上がると思います。営業外損益はそれほど毎年変わらないと思いますので。利益を内部留保して債務の減少につとめることができれば、さらに経常利益を上げることもできます。

      キャッシュフロー対売上高比率ですが、減価償却実施、引当金の計上を適正に行っていれば、それ以外の大きなファクターは当期利益です。つまり利益中心の経営を行うことで自然と収益性は改善されます。

    2. 流動性の悪い会社の戦略

      今度は別の会社のデータを用意してみました。

      流動性低の4指標レーダーチャート

      今度は流動性が低い会社です。流動性を改善する方法も同様に解説いたしましょう。

      流動性は、

      • 必要運転資金月商倍率
      • 立替工事高比率
      • 受取勘定月商倍率

      の3つの指標があります。

      この流動性という考え方は経営事項審査の中で比較的新しく設定された項目です。つまり、現状の建設業界を的確に示す要素であるということになります。

      まず必要運転資金月商倍率です。これは月の売上に対して、資金調達、資金回収がどの程度円滑に行われているかを示す指標です。改善のためには、まず売上債権をとにかく早期に回収するべきということになりますが、手形などで決済された売上債権の場合、材料費の支払いなどに裏書して渡すなり、早期に割り引くなりして流用することが必要です。手形を割り引くと、割引料が支払利息となりますので注意してください。

      また工事の受注に関しては、未成工事受け入れ金、すなわち前受金をもらう習慣をつけることも重要です。工期の長い工事の場合は、出来高請求ができないかを検討することも重要です。

      次に立替工事高比率です。これも先ほどの必要運転資金月商倍率と考え方は同じです。売上債権の回収を早めることで改善される項目です。支払条件のよい業者からの仕事を受けるようにシフト変更していくことも必要です。

      次は受取勘定月商倍率です。この指標は売上債権の回収状況を示す指標です。あまりにも支払いのタームが長い取引先があるのであれば、支払条件について交渉することも検討してみてください。

      この流動性の3つの指標はいずれも売上債権に注目しているところに特徴があります。売上債権が滞留すればそれだけ流動性が悪くなるわけで黒字倒産という結果を招く原因ともなります。

    3. 安定性の悪い会社の戦略

      次は安定性ですね。これは安定性の悪い会社のデータです。安定性を改善する方法を解説しましょう。

      安定性は、

      • 自己資本比率
      • 有利子負債月商倍率
      • 純支払利息比率

      の3つの指標があります。

      まず、自己資本比率ですが、企業の総資本のうち、企業の経営資金の調達源泉が自己のものか他人からの借り入れによるものかを比率で表したものです。当然自己調達されているほうが企業経営では健全ということになります。

      自己資本比率は建設業以外でも企業の経営分析で使われる指標となっています。

      自己資本比率の改善ポイントは、どのようにして借り入れでない自己資本を持つことができるか、ということですが、まずは利益の内部留保による地道な向上となりますが、さらに外部からの出資という方法で資金調達を行うことも検討するとよいでしょう。

      次は有利子負債月商倍率ですが、この指標は借入金などの有利子負債が月の売上に対してどの位あるのかを見るものです。この改善ポイントはいかに有利子負債を軽減するかということになろうかと思います。手持ちの遊休資産があるのならば、思い切って処分するという方法もありますね。

      次は、純支払利息比率です。この指標は実質の利息負担が売上高に対してどの程度あるのかをみる指標です。これもまずは現在の有利子負債をどこまで圧縮できるかがポイントとなります。

    4. 健全性の悪い会社の戦略

      最後に健全性です。では、健全性を改善する方法を解説しましょう。

      健全性は、

      • 自己資本対固定資産比率
      • 長期固定適合比率
      • 付加価値対固定資産比率

      の3つの指標があります。

      この3つは、固定資産の調達源泉が何であるか、また購入された固定資産がいかに付加価値を生んでいるかをみる指標です。銀行からの資金の借入で設備投資を行うと相対的に評価が低くなります。

      まず、自己資本対固定資産比率ですが、この指標は固定資産の調達が、自己資本でどの程度まかなわれているかを比率で見るものです。ここは土地、機械等の固定資産を多く持つと数値が悪くなりますので、いかに遊休資産を処分できるかがポイントとなります。

      処分した現金で借入金返済を行うことで、安定性の数値も改善されます。

      次に長期固定適合比率です。設備投資などの固定資産を自己資金もしくは長期に渡って返済する長期借入金でどの程度まかなっているかを示しています。高額な建設機械などは借入金で購入することもやむなしということのようですが、その場合も短期の借入金ではなく長期借入金でまかなうべき、ということになりますね。

      最後に付加価値対固定資産比率ですが、購入した固定資産がいかに企業の事業に有効に活用され利益を上げることができているかを示すものです。設備投資はもちろん必要ですが、それにともない工事施工の効率化をはかり結果として利益があがるものでなくてはなりません。

    経営状況Yについて解説しましたが、各指標のポイントとなるべき勘定科目は理解して頂いたと思いますが、実際に改善施策を考えると各指標が微妙に関連していて、一つの指標の改善だけでは思った効果が上がらないこともあります。逆にいつの間にか他の指標の数値が改善されていることもあります。

    具体的な改善計画のコツとしては、まず収益性のアップを考えることから始めてみましょう。これをアップするには詳細な原価管理と固定の縮減が必要です。

    また安定性をアップするには、いかに有利子負債を減らしていくかを検討しなければなりません。

    そのヒントは収益性と健全性の改善にありまして、健全性では遊休資産の処分を早急に行うことを検討しなければなりません。

    また流動性では資金の流れをスムーズにして売上債権の早期回収につとめなければなりません。以上のことを頭にいれて経営改善計画を立ててみてはいかがでしょうか。

  5. まとめ
    1. 経営事項審査から見えてくる建設業者のありかた

      こうして見てみると、経営事項審査には完成工事高だけではない、建設業者のありかたのようなものが見えてきます。評点アップのためには、的確な現状分析、それにあった経営改善計画、営業努力、技術力の強化などが複合的に要求されているわけです。

      さらに言うと、これからの時代は同じような工事施工の横並びでは評価されにくい時代であるとも言えます。特に中小建設業者は単なる下請仕事ではなく、時代のニーズにあった分野の仕事を見つけていくことも重要なことなのではないでしょうか。たとえて言うならば、高齢化社会に伴うバリアフリー住宅の施工、環境に配慮した建材を使った施工などです。

行政書士川口弘行事務所
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