この章では新規参入の脅威について事例を交えて解説します。
特に新規参入業者が新規参入を試みるための判断基準について考えていくことにしましょう。

前の章で新規参入業者が増えるか否かは、参入障壁の高さと既存業者の報復の可能性にその要因があることを学びました。一方、自分自身が新規参入業者として業界に入っていく際、これら2つの要因を克服しなければなりません。そこで新規参入に旨味があるかどうかを考えてみます。

新規参入するために要するコストを挙げておきました。新たな業界で事業をすること自体に必要なコスト、参入障壁を越えるためのコスト、既存業者の報復に対処するコストという3つに分けることができます。

一方、利得は参入することによって得られる利益が主ですが、それ以外にも間接的な利得としてブランドイメージの向上、関係業界とのチャネルなどが考えられます。

単純にコストと利得を比較すると、利得がコストの合計を上回るのならば、新規参入の意義はあります。ところが注意しなければならないことがあります。参入により得られる利得は当初の目論見(もくろみ)よりも低くなるのです。これは既存業者の意図的な価格変更だけでなく、製品流通量の増加に伴う市場価格の下落もひとつの要因です。

新規参入について、ポーターは興味深い発言をしています。経済学は完全競争状態を前提とした経済法則を考えますが、経営学は逆に、いかにして完全競争状態を崩すのかいかにして完全競争状態でない業界を探すのかという視点で考えます。

そこで新規参入を果たすための戦略は、完全競争状態ではない業界を狙うことがセオリーとなります。スライドではオーダーメード製品の事例を挙げていますが、ここ最近は買い手の嗜好が細分化される傾向にありますので、結果として新規参入しやすい業界が増えているとも解釈できますね。

さらに、このスライドではコストと利得の関係に着目しています。すなわち、コストが少ない業界、あるいは利得が大きい業界を狙うというものです。利得は新規参入する業界自体で得られなくとも、関連する業界で利得が期待できるのならば、参入に踏み切る判断も可能となります。

さらに別の視点で考えてみましょう。ある特定の条件ならば参入障壁が低く、既存業者の報復が生じない場合も考えられます。たまたま既存業者の得意としていないセグメントだったり、小規模であるがゆえにリスクが小さい場合などです。その場合、集中戦略を用いて業界に参入し、そこからセグメントを広げていく方法も考えられます。

第4章のまとめです。
この章では新規参入の脅威について、新規参入業者の視点からの戦略を通じて学びました。

市場要因の働き方が不完全な業界とは、競争がうまく機能していない業界なのです。